都内に15店「麺屋武蔵」社長・矢都木二郎さんの巻<4>
旬香亭(東京・目白)
1都3県は緊急事態宣言が延長されて、まだまだ外食が難しそうですが、旬香亭さんのような老舗洋食店でのランチは間違いなくひと時の癒やしになります。密を避けながらの家族ディナーもいいでしょう。そんな店です。
玄関を入ると、背筋をピンと張ったマスターに出迎えられます。よく通る声で「こちらへ」と。怒鳴るような大声ではないけど、張りのある声がいい。経験を重ねたホテルマンのような雰囲気で、老舗の伝統が垣間見えるでしょう。
メニューを開くと、レギュラーのフライコーナーとは別に、アジや牡蠣などその日のオススメのフライが並びます。視線を下におろすと、ラム! これは珍しい。
レギュラーのページには、ひとくちヒレカツやカニクリームコロッケ、ミンチポテトコロッケ、メンチカツ……と定番がズラリ。
これにタンシチュー、ステーキハンバーグ、王道のステーキに、マカロニグラタン、ブラックチキンカレー、ハヤシライスと続くのですから、私のような食いしん坊は正直、決められません。何度も通った結論、ベタですが、何を食べてもウマい。
前菜盛り合わせをアテにビール、ワインを
日替わりの前菜盛り合わせは前回、一口サイズのカツサンド、ニンジンのムース、リエット、ポテサラ、パテドカンパーニュ、スモークサーモン、サバのマリネの7種でした。
実はサーモンの下にはキャロットラペ、サバの下にはラタトゥイユが隠れているので、実質9種で1300円は安い。どれも丁寧な仕事でビストロの味わいがうれしい。これをアテにビール(中750円)やワイン(グラス800円~)を飲むと最高です。
フライは、牡蠣フライは1個300円などと複数のタネは一口サイズが充実しています。そういうのをいくつかチョイスして、自分用のミックスフライをつくるのもいいでしょう。カニクリームコロッケ1個と牡蠣フライ2個、ラムカツ(1100円)をオーダーすると、牡蠣とカニクリームが一皿に盛って登場。魚介系と肉を分けてくださる気配りがうれしい。
牡蠣には、ガストロバックという減圧加熱器が使われています。これを使うことで、素材をほどよい状態で加熱でき、ウマ味を閉じ込めつつ、みずみずしく仕上げることができるのです。牡蠣のプリプリ感たるやたまりませんよ。卵の黄身をたっぷり使った黄色いタルタルソースでいただくのが一番でしょう。
付け合わせのキャベツもこの処理がされていて、シャキシャキ感が増した印象です。キャベツ(300円)がメニューとして成立しているのはそのためです。
ステーキハンバーグは絶妙な食感
魚介のフライを食べ終えるタイミングで、ラムカツが。ラムのおいしさが濃縮され、食感はしっとりと。とても食べやすく、クミン塩がウマ味を引き立てるのです。
ハンバーグ(150グラム1500円)は、ステーキの名前がつけられているように、かなり粗く切った和牛がミックスされていて、そこをかみしめると、まさにステーキの食感。オススメに従って、デミグラスソースで半分、ワサビ醤油で半分が最高です。
一部メニューは電話で注文すると、テークアウトも可能。老舗の味をぜひ!
(取材協力・キイストン)
■旬香亭
東京都豊島区目白2―39―1 トラッド目白2階
℡03・5927・1606
■麺屋武蔵
1996年創業。現在は青山や新宿、池袋など都内に15店舗を展開。企業とコラボするほか、小学校へのラーメン給食の提供や調理専門学校での出前授業など、新しい試みにも積極的に取り組んでいる。
▽やとぎ・じろう
1976年、埼玉県生まれ。城西大卒業後、一般企業に就職するが、大学時代にハマったつけ麺を日本全国に広めたいとの思いから、24歳で麺屋武蔵に転職。3年後、上野店店長に。2013年、先代からバトンを継ぎ、2代目社長に就任。