「なかめのてっぺん」など運営「MUGEN」内山正宏代表取締役の巻<2>

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岸田屋(東京・月島)

 東京・月島のもんじゃストリートにある岸田屋さんは皆さんご存じの居酒屋の名店。北千住の大はし、森下の山利喜と並んで、東京3大煮込みの店として知られます。が、個人的には岸田屋さんが一番です。

 名物の煮込み(550円)を頼むと、「ネギはのせますか」と若女将。瓶ビール(大750円)を飲みながらしばらく待っていると、醤油と味噌でしっかりと煮込まれた一皿が「お兄さん、お待たせね」と出されます。

 噛むとスッとほぐれる煮込み加減、醤油と味噌のバランス、何より肉質がすごくいい。七味をかけてネギと一緒に口へ運ぶと、シャキシャキ感が加わるのがいい。

 山利喜は、ビーフシチューのようなといわれるだけに、ガーリックトーストと一緒に食べるのが名物で、かなり濃厚。大はしは、あめ色に煮詰まった豆腐とともに出される甘じょっぱい感じ。岸田屋さんの味わいはその中間ですが、部位の多さと仕事の丁寧さが抜きんでています。

 昔ながらのコの字形カウンターの特等席を求めて、開店前からお客さんが一人、また一人と列をつくります。コロナ禍の今、開店と同時に満席になることはないようですが、それでも5時台には、壁際の席も含めてほぼ埋まるようです。

どのメニューもハズレなし

 ザ居酒屋のたたずまいにホッとするのは、雰囲気だけではありません。女将さんや若女将ら、女性ならではのこまやかな気配りも大きく影響しています。優しい声掛けが心地よさを増しているのでしょう。

 飲食業界にいると、立ち仕事が多いわりに、休みが少ない。コロナ禍では営業の厳しさが、以前にも増して深刻化しています。「将来、どうなるのか」という不安は常につきまといますが、岸田屋さんで、女将さんや若女将の笑顔に触れると、こんな年齢の重ね方はいいなぁと思うんです。

 煮込みがウマいだけにほかの煮込み料理も外せません。肉豆腐(750円)は、豆腐が肉を覆いつくし、周りにたっぷりのネギが。スライスされた肉と豆腐、ネギを一緒に食べると、肉のウマ味とネギの甘味、豆腐の風味が混然一体となって、絶妙です。

 器に添えられたからしもいいのですが、七味をふると爽やかでいい。

 銀ダラ(800円)、イワシ(600円)、穴子(850円)、金目鯛(750円)など魚介の煮込みも常連サンが好みのものを注文。焼き物が好きなら、サバ塩焼き(550円)、鮭ハラス焼き(450円)、のどぐろ一夜干し(900円)でしょうか。

 そのほかポテサラ(350円)やぬた(550円)、もろきゅう(350円)といった具合で、奇をてらったメニューはありません。数も決して多くはありませんが、何を食べてもおいしい。だから常連サンは、顔を出すたび、好みのメニューを選ぶのです。

 品書きは向かい合う壁に張られています。ハズレがないので、体調に合わせて「きょうは左側の品書きだけ」といった頼み方をする人がいるのは面白いでしょう。

 大変なときだからこそ、名店の味に癒やされてみてはいかがでしょうか。

(取材協力・キイストン)

■岸田屋
東京都中央区月島3―15―12
℡03・3531・1974

▽MUGEN飲食店の運営のほか、消費者と生産者、仲卸などをつなぐ事業、食品リサイクルなどにも力を入れる。炉端焼き店「なかめのてっぺん」を中心に、寿司や天ぷら、カニ鍋など17店を展開。

▼うちやま・まさひろ 1974年生まれ。幼少のころから両親に連れられて割烹料理店で味覚を鍛えられた。調理師学校卒業後は、横浜のロイヤルパークホテルや老舗料亭、銀座の居酒屋などで飲食店経営のノウハウを習得。2006年、独立する。

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