「GAMIN」グループ社長・木下威征さんの巻<2>
畑キッチン(沖縄県・宮古島)
沖縄の宮古島周辺の海は、宮古ブルーと呼ばれるくらい透明度が高く、とにかくキレイです。新型コロナウイルスの感染が広がる前は、国内外の方がマリンレジャーに訪れていました。
そんな自然豊かな島で育った野菜や果物は、素材の味が濃い。ストレスなく飼育された宮古牛もいい。もちろん、魚介類は文句なし。何より島の人たちは優しくて、温かい。
島が持つ可能性の高さを知ると、衣食住すべてをサービスするホテルをイチからやってみたいという思いが強くなったのです。それを宮古島で。離島にお客さまを集めるには、すべてのサービスを洗練させないといらしてもらえません。
そこをとことん突き詰めて、昨年10月に1日5組限定のプライベートヴィラ「グランブルーギャマン」をオープン。宿泊客の方でなくても利用できる併設レストランをスタートしたのは今年2月です。
サーフィンが好きで、休みが取れると、宮古島に飛んでいました。もう10年になります。それで海で知り合った仲間に聞いたんです。どこか面白い店がないかって。その中で巡り合ったのが、この店です。実は、ご主人もサーフィンが趣味で意気投合しました。あるとき、ご主人を訪ねると、こう言われました。
「パリにいるんじゃないか。パリでズッキーニでも取っているさ」
マンゴー農園であることは承知していましたが、パリって? 実は、パリは宮古島の方言で畑のこと。畑の真ん中にあるビニールハウスを改造してできたお店で、店に向かう道は両側にサトウキビ畑が広がっています。
宮古島の三位一体で実現したカレー秘話
こちらのマンゴーカレーが抜群においしい。スプーンで口に運ぶと、ほのかな甘味の奥にまろやかな辛さを感じます。僕はさらに辛さを調節するためのガラムマサラをプラスするのが好みで、そうするとスパイスの深みを増しつつも、主張しすぎないのがとてもいいんです。
聞けば、売り物にならないマンゴーでジャムを作っていたそうですが、「酒飲みに、甘いものはそんなにいらない。辛いものでも作ったら」とご主人が同級生にアドバイスされたとか。
仲間には宮古牛の生産者もいて、そこから牛筋と骨を仕入れます。ストックされていたマンゴージャムをチャツネにして、とろとろに煮込んだ牛筋と骨のエキスと合わせたベースがほんとにおいしい。小麦粉を使っていないので、サラッとしていて、アッサリと食べられるのに、マンゴーと宮古牛に絶妙なスパイスで味わいが奥深い。
宮古島は、ヒバーチという島のコショウや島トウガラシなど島ならではのスパイスが豊富。マンゴーと宮古牛とスパイスの三位一体で仕上がった絶品カレーです。
頼むと、まず山盛りのサラダが出てきます。畑ですから、サラダもたっぷりなんです。そのセットが、何と700円。昔はワンコインでしたから驚きです。辛さの奥に、宮古んちゅの人のよさを強く感じる一皿ですね。
(取材協力・キイストン)
▼畑キッチン
沖縄県宮古島市平良字西里1780―4
▽GAMINグループ エビス本店のギャマンは13年目に突入。気軽に食事ができる「トラットリア」や「深夜食堂はなれ」など東京の飲食店4店舗、パンやスイーツを扱う店舗に加え、沖縄・宮古島に5組限定のプライベートヴィラ「グランブルーギャマン」もオープン。
▽きのした・たけまさ 1972年生まれ。辻調理師専門学校を首席で卒業し、渡仏。3ツ星レストランで腕を磨いて帰国すると、「AUX BACCHANALES」「モレスク」などを経て、2008年に「AU GAMIN DE TOKIO」を開店。T.K-BLOCKS社長。