著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

糖尿病や骨粗しょう症の治療の薬もドーピングの対象になる

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「ドーピング(doping)」は、スポーツにおいて運動能力を向上させるために禁止されている薬物や方法を使用する行為を指します。ドーピングの語源は諸説ありますが、最も一般的に知られている説は、南アフリカの原住民が儀式舞踊を演じる際に飲用していたとされる「dop」というアルコール飲料に由来するというものです。

 ドーピングと聞いて記憶に新しいのは、2022年の北京冬季五輪でROC(ロシア・オリンピック委員会)所属のフィギュアスケート選手、カミラ・ワリエワ(当時15歳=写真・ロイター)のドーピング問題(禁止薬物であるトリメタジジン検出)や、2017年にカヌー選手がライバルとなる選手の飲み物に禁止薬物の筋肉増強剤を混入した事件などが思い浮かびます。

 禁止物質として、蛋白同化ステロイドのように明らかに筋肉増強作用があるものはわかりやすいのですが、禁止物質は多岐にわたっています。たとえば、糖尿病治療に使われるインスリンも筋肉の合成を促進する作用があるためドーピングとなりますし、骨粗しょう症などで使用される選択的エストロゲン受容体調節薬などもホルモンバランスを男性側に傾け、男性ホルモン作用を相対的に増加させるためドーピングとなります。また、β遮断薬は本来、高血圧や心疾患の治療に使われる薬ですが、震え(振戦)の抑制にも効果があります。ですので、アーチェリーや射撃など一部の競技ではドーピングとなってしまうのです。

 私は10年前に公認スポーツファーマシストの資格を取得していて、資格取得時にこのようなアンチドーピング規則に関する知識を学びました。治療とは異なる観点で薬を見ることはとても新鮮だったのを覚えています。次回は、故意ではないドーピングである、「うっかりドーピング」についてお話しします。

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