著者のコラム一覧
酒向正春ねりま健育会病院院長

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

その患者さんにとって競馬が脳機能リハビリに有効なのはなぜか

公開日: 更新日:

「先生、今週もとりましたよ。新馬戦は難しいけど、古馬は予想しやすいです。毎週の予想がホントに楽しいです。しかし、先生の予想もよく当たりますね」

 毎朝の全員回診の時、患者さんからうれしそうな声であいさつされました。

 この患者さんは54歳になる独身の男性です。右脳出血後に重症左片麻痺と高次脳機能障害(劣位半球症候群)を生じました。著名な回復期リハビリ病院で6カ月間治療を受けましたが、車椅子介助の状態のため、自宅退院ができませんでした。

 そこで、自宅退院を目指すなら、超強化型老健「ライフサポートねりま」でのリハビリ治療が好評だとご紹介いただき、入所されたのです。それから、当老健で約6カ月間の入所リハビリを行い、杖歩行とADL(日常生活動作)が自立となり、劣位半球症候群も軽快されて、独居自宅退所が可能となりました。

 高次脳機能障害は重度の状態が長期間続くと、脳血管性認知症へ移行します。このため、認知機能を向上する訓練を年単位で継続することが必要です。認知機能低下を予防するためには、筋肉と体力を維持する運動(脳筋連関)を継続すること、新鮮なコミュニケーションを保つこと、そして、その人なりに生活を楽しむことの3つが重要になります。今回は「楽しむ」についてお話しします。

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