腸閉塞で絶飲食を経験した竹原慎二さん「よくボクサーやってたな」

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竹原慎二さん(元プロボクサー/50歳)=腸閉塞

「イレウス(腸閉塞)です。竹原さん、帰れませんよ」

 そう告げられたのは今年4月、救急車で運ばれた病院でした。

 その前日、ゴルフを楽しんだ後に刺し身などを食べて帰宅したら、なんとなくお腹の調子がおかしかったんです。腹痛が始まったのは翌日の昼ごはんを食べたあたりからでした。パンパンに張っているような、胃腸が動いていないような感じがしていました。

 前日に一緒に食事をした人に電話してそのことを話すと、3人のうち1人がやはり腹痛と嘔吐で病院に行ったとのこと。「どうやら寄生虫のアニサキスだったらしい」と聞いて自分もそれだと思い、ネットで調べました。すると、「アニサキスは正露丸に弱い」という記述を見つけまして、それをうのみにして正露丸を飲んだんです。でも治るどころか痛みが増してきて、夜10時ごろには冷や汗でビショビショになりました。

 妻に相談すると「救急車呼ぼうか? どうする?」と聞かれ、いったんは「ガマン」を選択したんですけど、深夜0時ごろになって「やっぱりダメだ」となり、救急車を呼びました。

 ところが、受け入れ先の病院がなかなか決まりません。やっと1カ所だけ「だいぶ待ちますけどいいですか?」と言ってもらえて、わらにもすがる思いでそこへ搬送してもらいました。

「だいぶ待つ」という言葉通り、病院に到着すると本当に急患が多くて、激しい痛みの波に襲われながら2時間ぐらい待たされました。やっと順番が回ってきて血液検査をすると炎症反応の数値が高くて、レントゲンを撮ると腸が閉塞しているようだとのことでした。「帰れませんよ」と言われたのはこの時で、そのまま入院になりました。

 すぐに痛み止めの薬を打たれ、鼻から管を入れられて腹の中のものを吸い上げる治療を受けました。3日間は鼻に管が入ったままで、水すらも飲めない絶飲食でした。鼻は痛いし、喉はカラカラだし、猛烈な空腹との闘いでした。あの2~3日は本当にきつかった。でも、思えば現役時代の減量はもっときつかったので、「昔よくボクサーやってたな」と改めて思いました。

「これで改善しなかったら次は小腸まで届く管を入れてみて、それでもだめなら最悪は閉塞している部分を切らなくちゃいけない」

 そんな状況の中、3日間の絶飲食と抗生物質の点滴のおかげでだいぶ通りがよくなり、4日目には少々便が出ました。そこで鼻の管が抜けて、おもゆの食事が取れるようになったのです。あまりのおいしさに感動を覚えました。

 予定では10日間の入院だったのですが、広島で仕事があったので「早く退院させてください」とわがままを言って、7日目で退院させてもらいました。医者が渋々だっただけあって、退院後しばらくは調子が上がらず、「やっぱ入院しとけばよかった」と少しだけ後悔しましたけどね(笑)。

 8年前の膀胱がんの時も、早めに退院させてもらって翌日にすぐ高熱が出て、再度入院しかけたんです。でも、お願いして薬を出してもらって、なんとか入院せずに乗り切った経緯がありました。今考えれば、やはり医者の言うことは聞いたほうがいいなと思います(笑)。

■糖尿病に気を付けたい

 結局、今回の腸閉塞の原因はよくわかりません。アニサキスだったかもしれないし、そうじゃなかったかもしれません。

 がんで膀胱を摘出した時に小腸を50センチ切って膀胱の代わりにしているので、腸が癒着しやすいこともあると思います。2年に1回、大腸と胃の内視鏡検査をしているんですけど、やや癒着気味だとは言われていたんですよね。

 腸閉塞は一度なるとクセになるらしく、「暴飲暴食は避けて再発しないよう気を付けてください」と医者に言われました。とはいえ暴飲暴食はやっちゃいますからね(笑)。でも、今は飲食店が閉まるのも早いし、2次会だ、3次会だとハシゴすることもないですから、昔ほどじゃないですけどね。

 気を付けなくちゃと思っているのは糖尿病です。テレビなどで糖尿病の患者さんのドキュメントなど見ると、人工透析しなくちゃいけなくなる場合もあって、大変じゃないですか。入院中、6人部屋だったので、急患でいろんな人が運ばれてきたんです。隣のベッドの人は透析のための管を入れるとかで、痛そうに叫んでました。ホント、糖尿病にはならないようにしようと強く思いました。

 思えばこの1年は大変でした。スパーリングの際にパンチが目に入って、視力がめちゃめちゃ落ちてしまいましたし、手首もちょこちょこ痛めてしまうし、腕立て伏せや腹筋で鍛え直していたのに腸閉塞で完全にゼロになりました。

 それ以来、すっかりトレーニングをやらなくなって、運動は唯一、ゴルフぐらいですね。目標だったシングルプレーヤーになるには「素質がない」と自覚して、いまは純粋に楽しむゴルフになっています。

(聞き手=松永詠美子)

▽竹原慎二(たけはら・しんじ)1972年、広島県生まれ。89年にプロボクサーとしてデビュー。95年にはWBA世界ミドル級王者を獲得し、翌96年に引退した。その後はタレントに転身し、バラエティー番組「ガチンコ!」(TBS系)のファイトクラブなどで人気を博す。2002年に「T&H 竹原慎二&畑山隆則ボクサ・フィットネス・ジム」を開設。世界王者の育成に尽力している。

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