著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

女優・角替和枝さん急死 原発不明がんとは何か? 治療法は

公開日: 更新日:

 そのため、原発不明がんには、がんの部位や組織型が異なるさまざまな病態が含まれていて、患者さん一人一人でがんの状態が大きく異なるのが特徴です。

■原発不明がんに最適な薬剤はまだ確立されず

 では、治療はどうするかというと、転移があるので薬物療法が中心で、シスプラチンやカルボプラチンといったプラチナ製剤がよく使われます。しかし、がんの薬物療法は、臓器ごとに使用すべき薬物が厳密に決まっているケースが多いのが現状です。

 それでも、原発不明がんにプラチナ製剤が使われるのは、プラチナ製剤が多くの臓器に有効なため。原発不明がんでは、最適な薬剤が確立されていません。

 ただし、亡くなってから病理解剖を行うと、5割程度の確率で原発巣が分かるようになっています。今後、検査精度が上がっていくと、原発不明がんと診断される方は減っていくかもしれません。そうなれば、原発巣ごとに決められた治療を確実に受けられるようになりますから、角替さんのような悲劇が生まれることはもっと少なくなります。

 一方、プラチナ製剤以外の薬剤の組み合わせについても、臨床試験が進行中です。原発不明がんというと、見えない敵と戦うようで厄介ですが、光がないわけではありません。原発不明がんと診断されたら、臨床経験が豊富な各地のがん拠点病院に相談することが大切です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 3

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  1. 6

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 7

    小野田紀美経済安保相の地元を週刊新潮が嗅ぎ回ったのは至極当然のこと

  3. 8

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 9

    「しんぶん赤旗」と橋下徹氏がタッグを組んだ“維新叩き”に自民党が喜ぶ構図

  5. 10

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み