こまつ座「太鼓たたいて笛ふいて」林芙美子の心の漂泊を大竹しのぶが絶妙に演じ切っている

公開日: 更新日:

 2002年に初演。前回から10年ぶり、5度目の再演となるが、上演するたびに舞台のテーマと反比例するように世の中のキナ臭さが増しているようだ。

 主人公の林芙美子は私生児として生まれ、養父・実母と共に行商を営みながら日本の各地を放浪。実際につけていた日記をもとにした自伝的小説「放浪記」(1928年)がベストセラーとなる。当時の女性が置かれた悲惨な現実を描いたことから抑圧された女性たちの共感を得たのだが、売れっ子作家になると、次第に国家に絡めとられていく。

 1935年、戦争の足音が聞こえ始めた頃、後に政府の宣伝担当になる音楽プロデューサーが芙美子にささやく。

「世の中を動かすのは『ものがたり』です。今も昔も変わらないのは『戦争は儲かる』というものがたり。その『ものがたり』に国も国民大衆も熱狂するのです」

 時流に合わせるかのように、芙美子は従軍記者として戦地に赴き、戦争を賛美し、兵隊の士気を高めた。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中山美穂さん急死、自宅浴槽内に座り前のめり状態で…大好きだった“にぎやかな酒”、ヒートショックの可能性も

  2. 2

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  3. 3

    山﨑賢人「興収100億円」を引っさげて広瀬すずと結婚も…“兄”菅田将暉の幸せな夫婦生活に抱く憧れ

  4. 4

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5

    悠仁さま筑波大進学で起こる“ロイヤルフィーバー”…自宅から1時間半も皇族初「東大卒」断念の納得感

  1. 6

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    杉田水脈がハシゴ外され参院転出に“赤信号”…裏金非公認の免罪符「政倫審」弁明は現職のみ

  4. 9

    旧ジャニーズ激怒し紅白出場を“固辞”…Nスペ「ジャニー喜多川特集」放送後に起こっていること