新沼謙治さんの「忘れられない瞬間」 17社のプラカードが挙がった「スタ誕」決戦大会

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新沼謙治さん(歌手/66歳)

「嫁に来ないか」などヒット曲多数のベテラン歌手、新沼謙治さん。忘れられないのはオーディション番組のブームを起こした「スター誕生!」でスカウトマンからプラカードが上がった瞬間。「出稼ぎ人」から一転、人気歌手へ。そして今でもスタ誕ファミリーとの付き合いは続いている。

 ◇  ◇  ◇

 あの時はまだ若かったから、歌手になりたいという夢よりも「一度テレビに出てみたい!」という好奇心が強くて、応募したんです。

 番組に出る前の予選に2回合格しないと、本選の「スター誕生!」収録には出られない。オンエア1回目の予選に合格した人だけで決戦大会に。だから歌うのは4回あるわけです。

 最初のよみうりホールの予選には700人くらい来て、選ばれるのは7人。何度も合格せず、テレビに出られるまで長かった。なのに、初めて本選に選ばれ、後楽園ホールでの番組収録で歌ってみると、お客さんからたくさんの拍手をもらえて手応えを感じました。

■欽ちゃんの突っ込みも受けて

 欽ちゃんは出場者の履歴書に目を通されていたのか、歌の後に「左官屋さんだね? 壁塗ってるのかい?」とイジってくれて、「はい!」と答えると会場が爆笑。「ウケがいい。いけるんじゃないか」と(笑)。

 お客さんと審査員の合計得点が250点で合格ですが、大きく超えて決戦大会へ。

 決戦大会は出場者が全員歌い終わったら、番組の最後に1人ずつ順番に出て、客席の中に陣取っている各レコード会社やプロダクションのスカウトたちが、欲しい出場者の時に社名の入ったプラカードを上げるというシステム。

 僕は五木ひろしさんの「哀恋記」という、演歌にしてはリズミカルな歌で勝負。いよいよデビューできるか、これで終わるかの判定の時──。

 12人の最後の出番でしたが、僕の前まで1人しかプラカードが上がらなかった。その人はハワイ出身でデビューした横本メイちゃん。僕は岩手から出稼ぎ人として暮らしていた栃木県宇都宮出身として応募したけど、家族も親戚も友だちもテレビ見てるからと、思い切って「岩手県出身! 新沼謙治、よろしくお願いします!」と挨拶。

 そしたらブァーッとたくさんプラカードが上がりました(17社)。「スタ誕」決戦で一番多く札が上がったのが桜田淳子さん(25社)。僕は(山口)百恵ちゃんの次くらいかな。

 その瞬間、欽ちゃんが「うわー!!」と。僕はビックリして、何もしゃべれない。無口な出稼ぎ人ですから「ど……どうもっす」と力士のような返事をしてしまって。欽ちゃんに「君、あんまりうれしそうじゃないね」と突っ込まれ、またウケて。

 その瞬間から生活がガラリと変わりましたよ。翌年の昭和51年にデビュー。所属した日本コロムビアはその頃あまり調子がよくなかったらしいですけど、前年に細川たかしさんが「心のこり」でレコード大賞の最優秀新人賞をとり、翌年にデビューした僕が2枚目のシングル「嫁に来ないか」で新人賞。紅白歌合戦までいっちゃいましたからね。

 岩手から鈍行列車に揺られて宇都宮に出稼ぎに行った僕が、乗ったこともない飛行機や新幹線のグリーン車で移動して日本中を歌の仕事で巡る日々。

 寝る暇もなく大変でしたが、当時は沢田研二さんも西城秀樹さんもみなさんそうでした。僕も若かったからそういった方たちと「平凡」とかアイドル雑誌に載ったりして(笑)。

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