伊藤さとり
著者のコラム一覧
伊藤さとり映画パーソナリティー

映画コメンテーターとして映画舞台挨拶のMCやTVやラジオで映画紹介を始め、映画レビューを執筆。その他、TSUTAYA映画DJを25年にわたり務める。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。レギュラーは「伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談&監督対談番組(Youtube)他、東映チャンネル、ぴあ、スクリーン、シネマスクエア、otocotoなど。心理カウンセラーの資格から本を出版したり、心理テストをパンフレットや雑誌に掲載。映画賞審査員も。 →公式HP

「ドライブ・マイ・カー」大快挙も…アカデミー賞に見る日本の映画製作の課題

公開日: 更新日:

 特に近年のアカデミー賞は、映画製作に変革を与える作品が受賞しやすい傾向にあります。今年でいうならば『コーダ あいのうた』は、フランス映画『エール!』(2014)のリメイクでありながら耳の聞こえない家族の中で唯一の聴者である主人公が自分の夢と家族の未来について思い悩み、全員が一歩前に踏み出す姿を、実際のろう者俳優陣を家族役に起用したことも話題になり、大きな感動を生みました。

 以前から映画業界で議論されている、トランスジェンダー役や本作のろう者役など、当事者が当事者役を演じるべきではないか、という議論における一つの成功例として映画史に残るものとなりました。ただ個人の意見としては当事者がその役を演じることには賛同しつつも、演技の出来る当事者を発掘することが映画界においての今後の課題であると考えています。

■『ドライブ・マイ・カー』がなぜ世界で認められたのか

『コーダ あいのうた』の取り組み以外にも、今回のアカデミー賞からハリウッドの映画製作と日本を見比べると、人種やジェンダー、障害などの差別に対する映画製作の取り組みにおいて日本が世界に遅れを取っているように思われます。今回もアカデミー賞では才能ある女性監督を増やすことを意識し、実力者のジェーン・カンピオンが女性監督として映画賞史上3人目の受賞。日本からの作品であるはずの『ドライブ・マイ・カー』についても、大手の映画配給会社ではなく、日本国内での観客受けを意識して製作されていません。さらに多言語、多国籍の人々との関わりも交えながら、約3時間という時間をかけて一人の男の喪失と再生を描くという挑戦に出た作品です。

 これからの世界に認められる映画作りとは、社会に目を向けてジェンダーバランスや障害を持つ人々にも力を借りることを意識した映画作りなのではないでしょうか。映画で社会が変えられることを信じての映画製作を。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新の芸能記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    小倉一郎さん「がん」が肺、胸骨、脳の4カ所に…大病を機に、やりたい3つのことすぐ行動に

    小倉一郎さん「がん」が肺、胸骨、脳の4カ所に…大病を機に、やりたい3つのことすぐ行動に

  2. 2
    ポスト三浦瑠麗は決まりか… 岩田明子氏「めざまし8」「サンジャポ」出演を視聴者はどう見た

    ポスト三浦瑠麗は決まりか… 岩田明子氏「めざまし8」「サンジャポ」出演を視聴者はどう見た

  3. 3
    道端ジェシカ容疑者 МDМA所持の疑いで逮捕…母親は「しばらく連絡していない」と憔悴しきり

    道端ジェシカ容疑者 МDМA所持の疑いで逮捕…母親は「しばらく連絡していない」と憔悴しきり

  4. 4
    上田桃子まさかの大逆転負け…「バウンスバック率」が物語る“ミスで仏頂面”のマイナス

    上田桃子まさかの大逆転負け…「バウンスバック率」が物語る“ミスで仏頂面”のマイナス

  5. 5
    高市早苗氏こそ「国会軽視」…土日に“言い訳ツイート”20回超、シンパも心配する異常ぶり

    高市早苗氏こそ「国会軽視」…土日に“言い訳ツイート”20回超、シンパも心配する異常ぶり

  1. 6
    中居正広 WBC"静かなリポート"で体調不安説が再燃…元SMAPメンバーの活躍で奮起か?

    中居正広 WBC"静かなリポート"で体調不安説が再燃…元SMAPメンバーの活躍で奮起か?

  2. 7
    球児の“ペッパーミル”に審判ダメ出し 高野連の頭の中はいまだに「青春スポ根ドラマ」幻想

    球児の“ペッパーミル”に審判ダメ出し 高野連の頭の中はいまだに「青春スポ根ドラマ」幻想

  3. 8
    台湾新幹線の車両更新で「日本が逆転受注」のウラ事情 日台親善のうつろさ浮き彫りに

    台湾新幹線の車両更新で「日本が逆転受注」のウラ事情 日台親善のうつろさ浮き彫りに

  4. 9
    朗希のWBCメキシコ戦はメジャーの大品評会と化す “25歳ルール”クリアなら総額450億円契約も

    朗希のWBCメキシコ戦はメジャーの大品評会と化す “25歳ルール”クリアなら総額450億円契約も

  5. 10
    田中みな実と宇垣美里の明暗…キャラ丸かぶり元女子アナ「女優」で成功するのはどっち?

    田中みな実と宇垣美里の明暗…キャラ丸かぶり元女子アナ「女優」で成功するのはどっち?