<96>精いっぱいの演技か? 早貴被告はハンカチ片手に涙ぐんだ
市営の火葬場は炉の型が古いので、遺体が骨になるまで3時間近くかかると聞いていた。火葬場の係員たちは慣れたもので事務的に事は進んでいくが、私はこの場所も苦手だった。炉に入れられれば、お別れである。点火されて炎に包まれるドン・ファンの棺桶を想像しながら、私は怒りの視線を炉に向けていた。
「絶対にオレはこの敵を取ってやる。社長、誓うからね」
両手を合わせると、私はいったん、火葬場を後にした。