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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK「少年寅次郎スペシャル」井上真央の存在感が圧倒的だ

公開日: 更新日:

 4日夜、「少年寅次郎スペシャル」前編が放送された。昨年秋の土曜ドラマ「少年寅次郎」の続きにあたる。主な舞台は昭和25年。駆け出しのテキヤである寅次郎(井上優吏)は旅先にいる。

 山形の旅館で遭遇したのは、かつて柴又にいた、さとこ(森七菜)だ。今は仲居として働く彼女は寅次郎にとって「初恋の人」。恋心も再燃するが、間もなくリンゴ農家に嫁ぐことを知り、勝手に失恋してしまう。森は昭和のごく普通の女性を魅力的に演じて、「旬の女優」らしさを見せた。

 寅次郎は土産にもらったリンゴから、わんぱく小僧だった頃を思い出す。イタズラで盗んだお供えのリンゴ。病気で寝ている兄が食べていたリンゴのすりおろし。「俺の丈夫な体と取り換えてやりてえ」と泣く弟を、「おまえは俺の分まで外で暴れてこい」と兄が励ます。このあたり、岡田恵和の脚本が冴える。

 そして今回もまた、母親役の井上真央が圧倒的な存在感を示す。義父、遊び人の亭主、そして病弱な長男も抱えながら団子屋を切り盛りし、血のつながらない寅次郎を可愛がり続けた。亡くなる前、寅次郎が作ったリンゴのすりおろしを食べる時の繊細な微笑など、まるで「井上観音」だ。

 映画男はつらいよ」の前日談というだけでなく、「昭和の母子物語」として見続けたいドラマになっている。後編の放送は11日(金)だ。

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