「神秘の標本箱―昆虫―」丸山宗利、吉田攻一郎、法師人響著

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「神秘の標本箱―昆虫―」丸山宗利、吉田攻一郎、法師人響著

 昆虫が苦手だという人の苦手意識の背景には「よくわからない」ものへの漠然とした恐れがある。そこで多くの人に昆虫の魅力を知って欲しいと企画された大判写真集。

 深度合成という手法を用いて撮影された昆虫の写真をひと目見れば、その美しさに誰もが圧倒されることだろう。

 日本を代表するカミキリムシ「ルリボシカミキリ」は、その名の通り、青い体に規則的に黒い斑点が並び、長い触角も黒と青のツートンカラーで、デザイナーが手掛けた装飾品のようだ。

 体の一部のクローズアップも添えられている。絹のようにきめの細かい漆黒の複眼の周りをブルーの毛が覆う。それは、まるで絨毯のようで、虫の細部がここまで美しいとは思ってもみなかった。

 カマキリの威嚇のポーズはおなじみだが、西~中央アフリカに生息する「カブキカマキリ」のそれは一段と凝っている。

 黒地部分に白い突起が並ぶ内側の派手な模様を目立たせるためにカマを左右に開き、広げた羽は赤と白のまだら模様と一部が網目となっており、すべてが繊細で美しい。

 カマの内側には複眼を掃除するために細かい毛が生え、その毛を拡大すると汚れをひっかけやすいように粗いクシ状の形をしているのが分かる。

 ほかにも光り輝く銀粉が紫と金色を用いた織物のガウンのような蛾「キンマダラスイコバネ」や、透明な羽に淡い紫のぼかしが入った「ムラサキスカシジャノメ」、一見するとごつごつとした醜悪な姿なのだが、敵に襲われたときには触角と脚がすべて体の溝に収納されシンプルな円筒形になる「ムシクソハムシ」など。

 次から次へと登場する知られざる昆虫の美しさとその生態に驚くことばかり。何よりも著者3人の熱い昆虫愛が伝わってくるおすすめ本。 (KADOKAWA 5500円)

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