「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅/光文社新書(選者:佐高信)

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統一教会が画策した自衛隊によるクーデター

「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」樋田毅著/光文社新書

 今回の選挙は「SUT」のパージがポイントだと強調した。Sは世襲、Uは裏金、Tが統一教会である。自民党は裏金議員の一部を非公認としたが、SとTは問題にしなかった。しかし、法相の牧原秀樹が就任の記者会見で統一教会との濃い関係を明らかにしたことで分かるように、自民党とこのカルト教団とはまったく切れていない。私はそれをミックスジュースと表現した。もし、これからでもキチンと調査して、関係があったら公認しないとしたら、候補者はいなくなってしまうだろう。鈴木エイトの「自民党の統一教会汚染」(小学館)によれば、石破茂も関連の世界戦略総合研究所で講演したりしているからである。いまモテモテの国民民主党代表の玉木雄一郎も「世界日報」の元社長から寄付を受けたり、同紙のインタビューに応じたりしている。統一教会との関係を清算しない議員は例外なく改憲(壊憲)派で、家父長制を押しつけるこのカルトのウイルスに侵されている。

 統一教会の怖さはまだまだ知られていない。元広報部長による告白はそれを赤裸に伝えるが、統一教会は自衛隊に働きかけ、自衛隊を中心にしてクーデターを起こそうとしていた。

「はっきり言って、三島由紀夫氏が組織した『楯の会』よりも、我々の方が信頼を得ていたと思います。それは選挙応援の実績があったからだと思います。そうした信頼関係の下に、北海道の海岸線や沖縄の海岸線などを視察し、自衛隊の基地を訪問し、激励し、意見を述べました」

 元広報部長はこう語り、国際勝共連合という組織が「散弾銃で武装し、自衛隊で定期的に訓練も受けていた」ことを認める。

 そして「自民党に対して恨み骨髄」の次の告発をするのである。

「これまで非常に長い間、自民党とは特別な関係にありました。腐れ縁と言ってもいい。しかし、二〇二二年まで延々と続いてきた、この腐れ縁に対し、もはや懺悔するしかありません」「あれだけ統一教会に世話になっていたのに、都合が悪くなれば、手のひら返しです。自民党の議員たちの多くは見下げ果てた人間であり、自民党という政党は見下げ果てた組織です」

 表向き、自民党を応援できなくなった統一教会は、今回は国民民主や維新の選挙を手伝ったのではないか。自民党がそれらと連立することになったら、共通するのは統一教会印ということになる。 ★★★

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