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「NTT法廃止で日本は滅ぶ」深田萌絵著

 去る3月の閣議でいつのまにか決定されたのが、国民の財産を預かるNTTをめぐる改正NTT法だ。大手マスコミが報じないこの重大案件の中身は?



「NTT法廃止で日本は滅ぶ」深田萌絵著

 元は国の公共事業だったNTT(旧電電公社)は、いまも重要インフラを預かる立場。それゆえ普通の民間企業ではない種々の規制がかけられている。

 しかし、それらの規制が撤廃されると政府保有のNTT株か通信インフラのどちらかは外資に売却され、インフラを借りて営業するKDDIほかの企業は倒産の危険が高まる。さらに外資は独占的地位を利用してライバルを潰し、電話代を2倍3倍にする可能性もあるのだ。

 著者は通信業界のコンサルタント。かつては自動車メーカーの自動運転用の通信ソリューション開発にたずさわった経験があり、通信インフラからの技術革新が自動車産業の未来にも不可欠と確信したという。それだけに通信インフラは国家的な産業の保護や育成にとって最重要という主張には説得力がある。

 しかし、この問題での政府の姿勢を追及する野党はゼロ。大手マスコミも等閑視している。だが、これほど貴重な国家的資産を外資に売り飛ばそうとする政府自民党の姿勢は「裏金議員」による「通信インフラの利権化」だ、と著者は怒りを込めて直言する。日本国民は大いに耳を傾けるべきだろう。 (かや書房 1650円)

「国民の違和感は9割正しい」堤未果著

「国民の違和感は9割正しい」堤未果著

 おかしいことはおかしいとハッキリ言う。そんな著者の思いを託し、ずらりと目次にならぶ「違和感」がおよそ50以上。

 そのひとつに取り上げられたのが改正NTT法だ。

 普通の民間企業にはないさまざまな規制のあるNTTには経営上の不利があり、海外との競争力も見劣りする。これが岸田政権のいいぐさ。

 著者はフィリピンの例を見ろと言う。電気インフラの株式を少しずつ中国に買い増しされ、気づいたときには電力共有の重要部分を中国にガッチリ握られていたのだ。

「民営化」というお題目はこうして売国の隠れミノとなる。そう著者は警告する。 (PHP研究所 990円)

「ハイテク通信が軍事化される日」井上照幸著

「ハイテク通信が軍事化される日」井上照幸著

 改正NTT法は、何がまずいのか。

 もともと通信技術やそのインフラは、明治時代から軍備拡張と切っても切れない縁がある。

 戦後に民営化されたNTTは在日米軍のため、沖縄・嘉手納基地や東京・横田基地などで核戦争用の指令通信システムを提供している。

 いまは閉鎖・解体されたが愛知県にあった依佐美送信所などは米軍が原潜に最終的核攻撃指令を伝える重要な役目まで負っていたのだ。

 電気通信大を経て高崎経済大でこれらの問題に取り組んだ著者による本書は、こうした実情を一般書で明らかにしたほとんど唯一の存在と言ってもいい。

 実は本書はいったん出版されたものの事実上の絶版状態。いまはアマゾンの電子書籍キンドルで電子版が読めるだけだが、内容の重要度に照らしてあえて紹介する。キンドル・アンリミテッドなら無料で読むことができるのはうれしい。 (22世紀アート 800円)

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