「文学キョーダイ!!」奈倉有里、逢坂冬馬著

公開日: 更新日:

「文学キョーダイ!!」奈倉有里、逢坂冬馬著

 本屋大賞受賞作「同志少女よ、敵を撃て」の逢坂冬馬と、「夕暮れに夜明けの歌を」で紫式部文学賞受賞の奈倉有里は実は姉弟。奈倉が初の単著を上梓した1カ月後に、逢坂が「同志──」でデビュー。世に出てからは偶然にも同時期に評価されてきたという。そんな姉弟が「家族」「作家」「世界」について自由に語り合った対談集だ。

 2人が育ったのは「出世しなさい」がなかった家庭環境。逆に言えば「好きなことを見つけなさい」で、逢坂は「それはそれで結構大変だ」と子ども心に考えていたという。結果、姉は高校卒業後にロシアへ、弟はサラリーマンをしながら趣味で小説を書いていた。「同志──」の出版が決まったとき、姉がロシア考証に参加。「その名前はポーランド系だよ」「ソ連にはパン屋がないよ」と指摘され、「編集者より厳しい駄目出しだった」と振り返る。

 読書の意義を高校生に尋ねられた話から「好きなことを楽しむことに存在意義を認めない世の中は殺伐とする」(逢坂)、権力者のキャラクター化について「みなが思考しないで済む楽しいところに落ち着けば、権力者は扱いやすい」(奈倉)など、ジェンダーについて、文学の役割、そして戦争についてまで。

 現代文学の最前線を走る姉弟の思考の源を明かした、没入間違いなしの一冊だ。

(文藝春秋 1760円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  3. 3

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    (1)長嶋茂雄氏の「逆転巨人入り」は、銚子の料亭旅館の仲居さんの一言から始まった

  1. 6

    我が専大松戸がセンバツ王者で無敗の横浜に大金星も、達成感、喜びをあまり感じない理由

  2. 7

    永野芽郁「キャスター」“静かにフェードアウト説”一蹴!主演映画も絶好調で“稼げる女優”の底力発揮

  3. 8

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  4. 9

    長嶋茂雄さんは当然のように電車改札を「顔パス」しようとして、駅員に捕まった

  5. 10

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」