達人に学ぶ!言語化を強化する本特集

公開日: 更新日:

「すごい言語化」木暮太一著

 自分のことは自分が一番わかっているはずなのに、いざ言葉にしようと思うとうまく表現できない。「気持ちを整理したい」「正確に伝えたい」と真剣に考えるほどドツボにハマってしまうだろう。今回は、作家や書評家、コピーライターらによる4冊をご紹介。言語化の達人に学ぼう。

「すごい言語化」木暮太一著

「商品の魅力が伝わらない」というようなビジネスにおける問題は、発信者が、話し方などの「どう(How)伝えるか」ばかりを気にしていることが原因である。

 受け手が欲している情報は「どう」伝えてほしいかではなく、「なに(What)」を伝えてくれるのかということ。そのため、語彙力を増やしても文章力を磨いても意味がなく、大切なのはビジネスに必要な項目を伝えるためのフォーマットの習得だと著者は言う。

 たとえば相手に「価値」を伝えるときには、「①与える変化②与えるテンション③こだわり」に着目すること。「この技術を持っているのはうちしかありません!」というセールスでは「素材」は伝わるが、その価値は理解されないのだ。

「差別化したい」「信頼してほしい」などのケースごとに、センスに頼らない言語化術をシステマチックに指南する。 (ダイヤモンド社 1760円)

「『言葉にできない気持ち』の言語化ノート」NHK「言葉にできない、そんな夜。」制作班著

「『言葉にできない気持ち』の言語化ノート」NHK「言葉にできない、そんな夜。」制作班著

 初恋の常套句として「甘酸っぱい」と表現されるが、三島由紀夫は「一度も病気をしたことのない若者は、これが病気というものではないかと怖れた」(潮騒)と表現した。

 一方で、音楽クリエーターのヒャダインは同じく初恋の気持ちを「いきなり 世界が シャングリラ まままじか? こりゃたまらんぞ 胸が ジュクジュクしてるのだ」と楽曲内で表現。この歌詞に対してヒャダイン本人は「だいたい三島と言っていることは一緒です」とコメントしている。三島の胸中も“シャングリラ″していたのかと思うと面白い。

 ほかにも、仕事で疲れ果てた気持ちを「体のどこかに隠れていた疲労が汚染された血液のように体中に巡ってくるのを覚えた」と表した加賀乙彦や、昔の恋人を思い出す気持ちを「懐かしさの一歩手前でこみあげる 苦い思い出」と歌った竹内まりやなど、幅広い表現者が自分の心中を代弁してくれる一冊。 (小学館 1540円)

「瞬時に『言語化できる人』が、うまくいく。」荒木俊哉著

「瞬時に『言語化できる人』が、うまくいく。」荒木俊哉著

 急を要したときに言葉にできないのは、話したり、頭の中で考えたことの99%が「曖昧なイメージ」でしかないため。

 悩める駆け出しの電通コピーライターだった著者は、「思いついたことをA4一枚のメモに書き出す」トレーニングを実践した。A4紙の上部に「チームの課題は」などの「自分への問い」を書き、その下に回答と理由に分けて思いつくままに書く。「書く」作業によって感覚や概念だった胸の内を強制的に言葉にできるのだ。

 このとき重要なのが反復とスピード。仕事の合間でいいので、2分間の制限時間で1枚埋める作業を1日3回行う。明確になった言葉を大量にストックすることが目的なので継続は欠かせない。また、イメージの状態である無意識は自分のオリジナルな考えの宝庫であるため、深い思考よりも瞬時に言葉にして可視化することを優先する。

 著者と一緒に例題に取り組む「発展編」や、巻末の「500のメモの問い」まで用意され、実践まで丁寧に導いてくれるガイドブック。 (SBクリエイティブ 1650円)

「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい!』しかでてこない」三宅香帆著

「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい!』しかでてこない」三宅香帆著

 言語化が難しいと感じても自分を貶める必要はない。原稿用紙の使い方や文法は学校で学ぶが、言語化する方法は誰も教えてくれないのだから。

 言語化のコツは「妄想力」だと著者は言う。まず、「良かった」や「悪かった」などの漠然とした感想を抱いたら、その感情が生まれたポイントをできるだけ細かく具体例を挙げる。次に、人の感想は「新しさ」か「共感」のどちらかから生まれるため、「どこが新しかったのか、自分のどの体験と共感できたのか」をメモする。この繰り返しによって自分の考えを膨らませることができるようになるのだ。

 このとき、妄想は必ずしも正しい分析でなくともいい。自分の考えを言葉にすることは情報伝達だけでなく、「自分の人生を語ること」にもなる、と背中を押す。以降、「しゃべるときは相手との情報格差を埋める」「SNSでは他人の言葉を見ない」などのコツとともに、書評家の著者が表現に飢えたオタクに言葉を授ける。 (ディスカヴァー・トゥエンティワン 1760円)

【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    小泉進次郎「無知発言」連発、自民党内でも心配される知的レベル…本当に名門コロンビア大に留学?

  2. 2

    クビ寸前フィリーズ3A青柳晃洋に手を差し伸べそうな国内2球団…今季年俸1000万円と格安

  3. 3

    高畑充希は「早大演劇研究会に入るため」逆算して“関西屈指の女子校”四天王寺中学に合格

  4. 4

    9日間の都議選で露呈した「国民民主党」「再生の道」の凋落ぶり…玉木vs石丸“代表負け比べ”の様相

  5. 5

    国分太一コンプラ違反で無期限活動休止の「余罪」…パワハラ+性加害まがいのセクハラも

  1. 6

    野球少年らに言いたい。ノックよりもキャッチボールに時間をかけよう、指導者は怒り方も研究して欲しい

  2. 7

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 8

    ドジャース大谷「二刀流復活」どころか「投打共倒れ」の危険…投手復帰から2試合8打席連続無安打の不穏

  4. 9

    28時間で150回以上…トカラ列島で頻発する地震は「南海トラフ」「カルデラ噴火」の予兆か?

  5. 10

    自転車の歩道通行に反則金…安全運転ならセーフなの? それともアウト?