加来耕三(歴史家・作家)

公開日: 更新日:

2月×日 昨今、法律や法廷をテーマとした、いわゆる“リーガルドラマ”が頻繁に放送されている。本格派からコメディタッチのものまで、実に多種多様である。

 法律ものではないが、昨年放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の最終回で、主人公・北条義時の後継者である泰時が、武士初の法律「御成敗式目」を思案する様子が描かれていたことは、記憶に新しい。

 北条家が長きにわたって執権政治を維持し、鎌倉幕府を磐石なものとする上で、この法令は重要な柱となり、以降、武家の法律のモデルとなった意味でも、日本史に与えた影響は極めて大きい。

 戦国時代になると、大名が領地を支配するための「分国法」が各地で定められ、江戸時代には、幕府が大名統制のために「武家諸法度」を制定する。

 こうした用語を並べていくと、法律は一見、硬い印象を受けがちだが、それらをおもしろおかしくまとめた雑学本、こざきゆう文「ルールびっくり事典」(ポプラ社 1210円)を、先日、書店で偶然目にした。

 世界中にある変なルールをまとめたもので、各ルールができた背景を分かりやすく解説しており、それぞれの国や時代による考え方の違いに、なるほど、と感心させられた。

 リーガルドラマを見て、法律家に憧れた少年少女たちが、さらに興味を深めるきっかけとなり得る1冊ではないだろうか。

 帰路、車内にて読み進めながら事務所に戻ると、2月上旬刊行の拙著「大御所の後継者問題」(MdN新書 1100円)の見本が届いていた。本書は戦国時代のさまざまなお家の後継者問題を論じ、今日に活かせる事業承継のヒントを探ったビジネス書である。戦国の世であっても、現代の国家や企業であっても、ルールの整備は、事業承継はもとより、その組織の発展や存亡をも左右しかねない。

 そういえば、「ルールびっくり事典」には、看板に誤字があったら罰金、というブラジルのとある都市の規則が紹介されていた。日々、原稿の誤植と格闘しているわれわれ作家にとっては、耳が痛い限りである。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参院選神奈川で猛攻の参政党候補に疑惑を直撃! 警視庁時代に「横領発覚→依願退職→退職金で弁済」か

  2. 2

    キンプリ永瀬廉が大阪学芸高から日出高校に転校することになった家庭事情 大学は明治学院に進学

  3. 3

    浜辺美波&永瀬廉“お泊まり報道”で日テレから嬉しい悲鳴…大物カップル誕生で「24時間テレビ」注目度が急上昇

  4. 4

    教え子の今岡真訪が蹴った“倍額提示”…「お金じゃありません」と阪神入りを選んだ

  5. 5

    ホリエモンに「Fラン」とコキ下ろされた東洋大学の現在の「実力」は…伊東市長の学歴詐称疑惑でトバッチリ

  1. 6

    参院選千葉で国民民主党に選挙違反疑惑! パワハラ問題で渦中の女性議員が「証拠」をXに投稿

  2. 7

    石破自民「1人区」でまさかの「3勝29敗」もあり得る最終盤情勢…参院選歴史的大敗の予兆

  3. 8

    「自公過半数割れ」後の大政局…反石破勢力は「高市早苗首班」で参政党との連立も

  4. 9

    参院選「1人区」自民の牙城が崩壊危機 群馬、石川、鹿児島…歴史的敗北ラッシュも

  5. 10

    「サイゼリヤ」が中国の日式外食チェーンで一人勝ちの秘密…くら寿司、餃子の王将なぜ失敗