「なぜ理系に女性が少ないのか」横山広美氏

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「女性は理系に不向きって聞いたことありませんか? 実はそれは誤解なんです。国際学力テスト・PISAの日本の数学の成績は、男女ともに世界トップクラス。しかも、女子の成績は男子とほぼ変わらないんですね。にもかかわらず、大学や専門学校で理系を学ぶ女性の割合は、OECD加盟国中で最下位。その背景にあるのは、日本特有の社会風土があることなんです」

 ジェンダー平等が世界的に標榜される中、日本のジェンダーギャップ指数は116位(146カ国中)。とくに教育分野での性差別は、長年にわたり医学部入試で女子の点数が減点されていたことが明るみに出るまで知られていなかった。

 本書は、教育問題と社会風土という見えない関係性を、物理学出身で社会論の研究者である著者が、統計データによって世界で初めて明らかにした解剖書である。

「20歳から69歳までの男女1086人を対象に学問分野とジェンダーイメージを調査したところ、女性は理系に不向きというイメージが非常に強いことが分かりました。大学の進学率も女性のほうが男性より15%も低いというデータもあります。こうした調査から見えてくるのは、優秀さは男性のものであり女性には不要という、日本独自の“社会風土”です。2016年ごろ、人気アイドルグループの“女の子は可愛くなきゃね”“頭からっぽでいい”という歌詞が炎上したことがありましたが、ここまではっきりと性差別の実態を表すデータが出たのは驚きでした」

 著者は21年に「社会風土」と女性の理系進学の関係を日本とイギリスで調査。「社会風土」を性役割分担意識や知的な女性観などの4つの要因に分けたところ、「女性は知的でない方がいいと思う人ほど、理系に対して男性イメージを持つ」という傾向が日本に強く見られることを発見。知的な女性を歓迎しない日本の風土が明らかになった。

■リカちゃん人形は算数が苦手の設定

 そうした社会風土を象徴するのが「リカちゃん人形」だ。リカちゃんは、もともと算数が苦手と設定されており、幼少期から無意識に社会風土が刷り込まれていることが分かる。一方で、「女性は自分の成績を低く見積もるという自己効力感の低さがある」ことも本書で指摘されており、興味深い。

 そんな複雑に絡み合うしがらみを、どう取り払えばいいのか。

「私たちは、日本の中学1年生の男女を対象に“理系への進学意欲を高めるのはどんな情報か”という実験も行いました。その結果、就職に有利だという情報、ジェンダー平等情報、女子も数学が得意であるという情報をしっかり与えたときに意欲が向上しました。つまり、これらを早くから子どもたちに伝えていく必要があるんですね。幼少期から大人たちが声掛けをすれば、もっと理系の女性が出てくるんじゃないかと考えています」

 日本では、男女ともにジェンダー平等意識が低いことが大きな課題だが、教育問題の範疇にとどまらないこの問題の対処法について著者はこう述べる。

「女子の進学意欲を向上させた情報は、実は男子の意欲も高めたというデータが出ています。つまり、女性に優しい情報は男性にもプラスの影響があるんですね。今の日本の悪いところは男性にだけプレッシャーがかかっているところです。勉強でも仕事でも、性別によって能力が決まるわけではない。それは個人の差です。男性だからこうすべきとか、これは女の子っぽくないとか、そういう思い込みをなくすことが大切ではないでしょうか。そうすれば、男女問わず平等に機会が開かれ、誰にとっても優しい社会になるんじゃないかと期待しています」

(幻冬舎 1034円)

▽横山広美(よこやま・ひろみ) 1975年生まれ。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授。受賞歴に科学ジャーナリスト賞(2007年)、第5回東京理科大学物理学園賞(22年)など。

【連載】著者インタビュー

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