本橋信宏(ノンフィクション作家)

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9月×日 日頃、韓国に配慮した意見を言うと、「反日」と非難する保守政治家が、どういうわけか旧統一教会の話題が出ると押し黙る。韓国人教祖を「お父様」と呼び、その夫人を「マザームーン!」と絶叫する自民党議員。人間は表の顔と裏の顔を持っている。複雑怪奇なもの、それは人間。

 和田敦彦編「職業作家の生活と出版環境」(文学通信 2970円)は、忘れられた直木賞作家・榛葉英治の全体像を9名の教授や研究員たちが掘り起こした異色の研究書である。榛葉英治が残した膨大な日記をもとに、幻の作家の全体像を解剖している。

 戦後の混乱した満州を舞台にした「赤い雪」で1958年直木賞受賞。日記には71歳という年齢になっても、過去に同人だったライバルが亡くなると、「ざまみろ」と率直な感情をつづり、経済的に安定しない我が身を呪い、アルコール断ちできない自分に嫌悪を催す、裏の顔が垣間見える。

9月×日 新宿歌舞伎町の書き下ろしのために、連日現地を取材。元ぼったくりの帝王・影野臣直の歌舞伎町コネクションが大いに力を発揮する。「刑務所川柳 獄中で泣くヤツ、笑うヤツ」(駒草出版 1760円)は、影野臣直が囚人たちの川柳を選んだ異色句集。かつてのぼったくり王も改心して、ヤクザの社会復帰のバックアップ役である。人は変わるのだ。

9月×日 出演本数1万本、「恋愛する気はない。セックスしたいだけ」とうそぶく、もっともAV男優らしい男・沢木和也。その沢木が一昨年、食道がん+下咽頭がんになった。余命1年。野球少年の1人息子のために、少しでもカネを残そうと、からみの無い役で連日出演をこなし、息子の試合では邪魔にならないように、遠くから観戦した。沢木和也著「伝説のAV男優 沢木和也の『終活』癌で良かった」(取材・荒井禎雄 彩図社 1430円)の、息子への遺書が哀切極まる。

<息子へ お父さんとの時間は少し短かったけど… 君の人生はまだ長い。自由に楽しく生きて欲しい! お父さんは君の父になれて本当に幸福な人生でした。ありがとう!! お父さんより。>

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