トランプの影響力

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「トランプ大統領のクーデター」園田耕司著

 米国の議会中間選挙を前に、トランプがまたも策謀を始めた。米ニュースは前大統領の一挙手一投足に監視の目を注いでいる。



 昨年1月6日、ワシントンの連邦議会議事堂はトランプ支持者の群衆に襲撃され、議員たちは逃げまどった。彼らをそそのかしたのはトランプ。朝日新聞米国特派員としてそのニュースを現地で追った著者は、これを現職大統領がくわだてたクーデター(政権転覆)とみて、その顛末の一部始終を再現。また、その後に起こったアメリカ政治の変化をリポートする。

 トランプの暴虐に耐えかねた人々の中からは、それまで傍流だった左派への支持が強まり、労働者階級や人種的マイノリティーから特に女性の新人議員が続々誕生。従来の妥協型政治に慣れきった民主党の上層部も、彼らのような新しい勢力を無視することができなくなっている。だが、その一方で、トランプを支持する草の根の存在も目が離せない。彼らはトランプが再選できなかったことに「絶望にも似た怒り」を覚え、それが国内の秩序を脅かす大きな要因になっている。「多様化」が叫ばれる現在でも、アメリカの主流派は白人。単に数の問題というより、これまで安泰だと思っていた自分たちの立場が危うくなったという不安感が、彼らをトランプ支持という愚かな選択に押しやっている。

(筑摩書房 1870円)

「激動期のアメリカ」山岸敬和、岩田仲弘編著

 副題に「理論と現場から見たトランプ時代とその後」。名古屋にある南山大学などの研究者らと、同じ地元の中日新聞のアメリカ特派員らが共同で取り組んだ成果が「理論と現場」というわけだ。

 前半は「理論から」として「なぜ共和党議員はトランプに従ったのか」「なぜ民主党は労働者の支持を失ったのか」「なぜ福音派はトランプを支持したのか」などの問題が学問的に考察される。宗教的に厳格で熱狂的な福音派キリスト教徒が、どう見ても道徳的でないトランプを熱心に支持するのはなぜか。それはブッシュをかついだ福音派が、一時は退潮したもののオバマ政権下で「徐々に休眠状態から再覚醒」したことに遠因があるという。

 後半は「現場から」で、「コロナ禍で露呈した根深い黒人差別とアジア系憎悪」「GAFA支配と地方紙の衰退」「拡大する陰謀論と大統領選」などの話題が並ぶ。こちらは新聞記者たちが主軸になった取材ものが中心だ。州議会選挙で陰謀論を自らふりまいた落選候補者への直接インタビューなど、ジャーナリズムらしいアプローチが特徴だ。

(大学教育出版 2750円)

「アメリカ人の4人に1人はトランプが大統領だと信じている」町山智浩著

「週刊文春」連載の名物コラム「言霊USA」。アメリカの政治や文化のトンデモ話ばかりを毎週取り上げては著者ならではの鋭いツッコミを入れる。最初は芸能ネタが多かったが、しだいに政治がらみが増え、トランプが大統領選に出馬した2016年からは毎週のようにトランプ関連を取り上げる回が続いた。本書はその最新刊。

 20年の夏からの1年間の連載をまとめたものだが、古い話題というより当時の生々しい記憶を思い出すのにいい。選挙の劣勢を感じたトランプがあの手この手で「選挙不正」という口実の伏線を張っていたさまがわかるのだ。

 道徳的に厳格な福音派がトランプに秋波を送り、保守派に後押しされた女性の最高裁判事候補は「憲法が保障する5つの自由」をうまく答えられず、それでも多数派(当時)の共和党が押し切って判事に就任。その影響で長年守られてきた女性の中絶選択の権利がこの夏にも奪われるかもといわれている。トランプは辞めてもなお政治力を保っているのだ。

(文藝春秋 1320円)

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