「おっさんの掟」谷口真由美著/小学館新書

公開日: 更新日:

 石原慎太郎が亡くなって、それはホメ殺しではないかと思えるほどの賛辞が並べられている。しかし、私は5年前に「石原慎太郎への弔辞」(ベストブック)を出した。そこに収録した座談会で辛淑玉が「彼は男はわかるんですよ。男は同胞で、戦争ごっこをできる仲間だと思っていますよ。女も外国人も障害者も全部嫌いなんですよ」と発言し、私が、「わからないんだ」と口をはさむと、「わからないし、向き合いたいとも思わない。石原さんは男は好きですよ。女は性欲のはけ口」と断定した。この石原に勝るとも劣らないオッサンが森喜朗である。例の森の「わきまえない女」発言も、その対象は谷口とされた。改革を装うためにラグビー界に招かれながら、改革をやりすぎるとして彼女はハシゴを外されてしまった。

 この本の副題は「『大阪のおばちゃん』が見た日本ラグビー協会『失敗の本質』」だが、現在もラグビー界は「失敗」とは思っていないだろう。そこが「いかに閉ざされた社会であるか」を語るこの本を読みながら、私はその指摘がそのまま、ほとんどの日本の会社、そして日本に当てはまると思った。

 石原は「日本維新の会」の橋下徹と提携したが、維新こそオッサン政治の典型であり、維新がはびこっているということはオッサン勢力がむしろ伸びているということである。

 オッサン政治に対抗する「全日本おばちゃん党」を立ち上げた谷口は、オッサンを、年齢や見た目には関係なく、「独善的で上から目線、とにかく偉そうで、間違っても謝ることもせず、人の話を聞かない男性」と定義し、「ありがとう」「ごめんなさい」「おめでとう」が言えない人たちだと付け加える。

 そして、次のようにまとめるのである。

・上司や目上の人間の前では平身低頭。組織からはじき出されたくないので、とくに「ムラの長」には絶対服従。しかし部下や下請けなど立場の弱い人間にはとにかく高圧的。

・口癖は「みんながそう言っている」「昔からそうだよ」「それが常識だ」という3つの思考停止ワード──理解ではなく、慣例や同調圧力で部下を黙らせる。

・とにかく保守的。部下や若手からの提案に対しては「リスクが大きい」「誰が責任を取るのか」と否定から入る。

 もうひとつあるのだが、それはぜひこの本を読んでほしい。さすがの谷口もすべては語っていないので、星は2つ半とする。 ★★半(選者・佐高信)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    侍Jの官邸表敬訪問は誰も止められなかったのか…帰国当日のムチャぶり強行軍に疑問噴出

    侍Jの官邸表敬訪問は誰も止められなかったのか…帰国当日のムチャぶり強行軍に疑問噴出

  2. 2
    芦田愛菜、谷花音、鈴木福、本田望結…高学歴が話題の元子役たち“評価真っ二つ”のナゼ

    芦田愛菜、谷花音、鈴木福、本田望結…高学歴が話題の元子役たち“評価真っ二つ”のナゼ

  3. 3
    滝沢秀明氏の新会社設立は“辞めジャニ”の受け皿に…古巣ジャニーズ事務所は余裕の静観

    滝沢秀明氏の新会社設立は“辞めジャニ”の受け皿に…古巣ジャニーズ事務所は余裕の静観

  4. 4
    滝沢秀明氏「新会社設立」の絶妙タイミングに称賛集まる “辞めジャニ”勝ち組・負け組が鮮明に

    滝沢秀明氏「新会社設立」の絶妙タイミングに称賛集まる “辞めジャニ”勝ち組・負け組が鮮明に

  5. 5
    ジェシカ容疑者は“夜の女王”…美人ハーフ道端3姉妹の奔放すぎる行動と素顔

    ジェシカ容疑者は“夜の女王”…美人ハーフ道端3姉妹の奔放すぎる行動と素顔

  1. 6
    WBC連覇逃した米国のやりたい放題! カネ・ルール変更・身内の審判…その先に見据えるもの

    WBC連覇逃した米国のやりたい放題! カネ・ルール変更・身内の審判…その先に見据えるもの

  2. 7
    大谷翔平は「最高級品」ゆえのオール特別待遇だった 決勝戦リリーフ登板は本人がエ軍に“直談判”

    大谷翔平は「最高級品」ゆえのオール特別待遇だった 決勝戦リリーフ登板は本人がエ軍に“直談判”

  3. 8
    キムタク「教場0」ビジュアル解禁も反応パッとせず…福山雅治との“番宣合戦”で共倒れの懸念

    キムタク「教場0」ビジュアル解禁も反応パッとせず…福山雅治との“番宣合戦”で共倒れの懸念

  4. 9
    元AKB48“神7”の明暗クッキリ…篠田麻里子はドロ沼離婚、板野友美は夫がWBC優勝で歓喜

    元AKB48“神7”の明暗クッキリ…篠田麻里子はドロ沼離婚、板野友美は夫がWBC優勝で歓喜

  5. 10
    見事だったWBC決勝での侍J継投策 吉井投手コーチは“一球入魂”の落とし穴を熟知していた

    見事だったWBC決勝での侍J継投策 吉井投手コーチは“一球入魂”の落とし穴を熟知していた