「がん消滅の罠」岩木一麻著

公開日: 更新日:

 生命保険の特約のひとつにリビングニーズ特約がある。余命6カ月を医師から宣告された場合、支払われる死亡保険金の一部または全部を生前に受け取れる制度だ。本書はこの特約がひとつのカギとなる医療ミステリー。

【あらすじ】日本がんセンター研究所の呼吸器内科の医師・夏目は、小暮真理が重度の肺腺がんにかかっており、手術が不可能であることを告げた。小暮に余命を問われた夏目は明言を避けるが、彼女はリビングニーズ特約付きの生命保険に入っており、母子家庭で、かつ娘に障害があるので、はっきり教えてほしいという。抗がん剤治療を行っても余命は半年程度と予測していた夏目は関係書類の手続きを引き受けた。

 すると、大学時代の友人で生命保険会社の調査部に勤める森川から、小暮は生命保険加入から8カ月で末期がんと診断されたことで不正の疑いがあると告げられる。しかも夏目の患者で同様の事案が過去3例あり、これが4例目だという。さらに不思議なのは、いずれもその後、がんが消滅し寛解しているのだ。しかし夏目の診断は間違いなく、いずれも不正の痕跡は見られない。一体どういうことか。

 一方で政財界の有力者が多く治療に通っている湾岸医療センターでは、初期がんが急に転移し、その後寛解に至るという不思議な現象が起こっていた。この不自然な現象の背後には人為的な介入があるとみて、夏目は同僚の羽島と協力して調査を進めていくが……。

【読みどころ】抗がん剤治療の最先端、新薬開発の舞台裏、リビングニーズ特約の仕組みと現状、医師の倫理観といった幾重もの問題を、見事にひとつの物語にまとめ上げ、二重三重のどんでん返しを仕掛ける、「このミス」大賞受賞作。 〈石〉

(宝島社 748円)


日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

人気キーワード

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    鈴木福クンが一流大学合格で高学歴タレントの仲間入り! 元天才子役が歩く明るい未来

    鈴木福クンが一流大学合格で高学歴タレントの仲間入り! 元天才子役が歩く明るい未来

  2. 2
    俳優・渡辺徹さんはわずか8日で急逝 「食中毒」には命を落とすリスクが…他人事ではない!

    俳優・渡辺徹さんはわずか8日で急逝 「食中毒」には命を落とすリスクが…他人事ではない!

  3. 3
    ティアラの怒りの矛先は永瀬廉に…SMAP解散時のキムタクを彷彿とさせる一部アンチの暴走

    ティアラの怒りの矛先は永瀬廉に…SMAP解散時のキムタクを彷彿とさせる一部アンチの暴走

  4. 4
    森保監督と代表選手が手にするボーナスいくら? W杯16強終戦もドイツとスペイン破る快挙

    森保監督と代表選手が手にするボーナスいくら? W杯16強終戦もドイツとスペイン破る快挙

  5. 5
    森保監督は続投要請を固辞か…重圧激務に合わない低年俸、アジア金満クラブや各代表が垂涎

    森保監督は続投要請を固辞か…重圧激務に合わない低年俸、アジア金満クラブや各代表が垂涎

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    FA近藤健介に大型契約の重圧…ソフトB「6年35億円規模」に日本ハムも条件上乗せ対抗

    FA近藤健介に大型契約の重圧…ソフトB「6年35億円規模」に日本ハムも条件上乗せ対抗

  3. 8
    “脱いだらすごい”女子ゴルファー小澤美奈瀬を直撃!「母に洋服の面積を心配されたけど…」

    “脱いだらすごい”女子ゴルファー小澤美奈瀬を直撃!「母に洋服の面積を心配されたけど…」

  4. 9
    高級食パン「乃が美」はやっぱりピンチ? FCオーナー告発、創業者退任で気になるブームの行方

    高級食パン「乃が美」はやっぱりピンチ? FCオーナー告発、創業者退任で気になるブームの行方

  5. 10
    芦田愛菜は大絶賛も…“着物姿”を比べられた神田うのの悲哀

    芦田愛菜は大絶賛も…“着物姿”を比べられた神田うのの悲哀