「新装版 暁天の星 鬼籍通覧」椹野道流著

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 法医学は、科学的で公正な医学的判断を下すことによって、個人の基本的人権の擁護、社会の安全、福祉の維持に寄与することを目的とする重要な学問だが、その取り巻く環境は厳しい。本書の法医学教室の教授が後進の若手に言う。君たちは明け方の空に輝く「暁天の星」だ、明け方の空では明るくて空高くにある星しか見えないのと同じで、法医学界における才能ある若い人の数は非常に少ない、と。

【あらすじ】伊月崇はこの春から大阪O医科大学法医学教室の大学院生となった。長身で全身黒ずくめ、派手なアクセサリーと、どう見ても医者というよりビジュアル系ロックの人。しかし、学生と見紛う若々しい顔に茶髪のショートという助手の伏野ミチル、小柄で痩せぎすだが、えらの張った顔だけ妙に大きい写楽顔の都筑教授、解剖学の生き字引の技師長・清田、若いが腕の確かな技術員の森ら個性的な面々に教わりながら、伊月は徐々に法医学の役割を理解していく。警察との関係も深く、伊月の小学校の同級生で刑事になった筧とも再会することに。

 ようやく解剖にも慣れてきた頃に持ち込まれたのが、電車に身を投げた女性の遺体。証言によると、周囲に人がいないのにまるで誰かに引っ張られたように線路に落ちていったという。さらに吸い込まれるように対向車に向かってきて轢死した女性の遺体も解剖することになったが、2人の遺体にはある共通点があった。しかも一見無関係なこの2つの事件は過去のある出来事につながっていた……。

【読みどころ】解剖の描写や原因究明の推理は極めてリアルなのだが、そこへオカルト風味が加味されて独特の味わいを醸し出している。現在シリーズ8作が刊行。 <石>

(講談社 836円)

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