「医学生」南木佳士著

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 1970年、秋田大学に国立大学としては戦後初の医学部が新設された。これは医師不足に悩む秋田県の強い要請による特例だったという。本書は、同大医学部に入った4人の医学生が「学生」から「医師」へと変わっていく軌跡を描いた成長物語。

【あらすじ】車谷和丸は父が内科医、母が小児科医という医者一家の長男。1歳下の弟は優秀で推薦入学で私立大の医学部に入れることは確実、浪人すれば同学年になってしまう。やむなく創設2年目の秋田大学医学部に行くが、都落ちした感は否めず、東京へ戻ることばかり考えていた。

 桑田京子は信州の野菜農家の長女。東京の大学へ行って弁護士になるのが夢だったが、無医村になった村では京子に奨学金を出すから医者になってもらいたいと懇願。その意を受けて勉学に励んでいた。小宮雄二は新潟県の旅館の次男。1浪した後、当時の医学部ブームに乗っただけでこれという野心や意欲もなく、授業をサボって居酒屋に入り浸るという毎日。今野修三は妻と2人の子供を抱える28歳。千葉県の高校の教師だったが、教え子2人が相次いで突然死。己の無力さを痛感し、医者に転身することを決意する。

 生い立ちも動機もまるで違う4人だが、人体解剖で同じグループとなる。遺体という直接的な死に向き合うことで、それまで曖昧だった医者になることの意味が、右往左往しながらも徐々に明確になっていく――。

【読みどころ】4年間の専門課程の模様がつぶさに描かれる。膨大な知識が必要とされ、人の生死に直接関わっていく医者という仕事の大変さが改めて伝わってくる。そう、初めから医者の人などいない。皆、こうした道を経て医者になるのだ。

 ちなみに、著者は本書の医学生と同じ、同大医学部の2期生。 <石>

(文藝春秋 550円+税)

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