「苦海・浄土・日本」田中優子著

公開日: 更新日:

 水俣病患者とその家族に寄り添い、社会に問うた「苦海浄土―わが水俣病」の著者、石牟礼道子。

 大学1年の時に出合った同書に衝撃を受け、ノーベル文学賞にも値すると高く評価する著者が、石牟礼文学の本質とその思想に迫る評伝的文学論である。

 東日本大震災の翌年に行われた対談を再録、さらに作家の他の作品も読み解きながら、石牟礼文学は水俣病という過酷な状況だけではなく、「近代の引き起こした問題群および、1人の日本女性が抱えたさまざまな苦悩と、その原因である日本社会の問題」をも抱え込んでいたことを明らかにしていく。

 そして、社会や政治が経済発展ばかりを目指すことで起こる人々の命の困難を、水俣病という視点から凝視していた作家なら、今のコロナ禍をどう捉えたかと考える。

(集英社 880円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  2. 2

    大谷 28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」とは?

  3. 3

    学力偏差値とは別? 東京理科大が「MARCH」ではなく「早慶上智」グループに括られるワケ

  4. 4

    ドジャース大谷の投手復帰またまた先送り…ローテ右腕がIL入り、いよいよ打線から外せなくなった

  5. 5

    よく聞かれる「中学野球は硬式と軟式のどちらがいい?」に僕の見解は…

  1. 6

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  2. 7

    進次郎農相の「500%」発言で抗議殺到、ついに声明文…“元凶”にされたコメ卸「木徳神糧」の困惑

  3. 8

    長嶋茂雄さんが立大時代の一茂氏にブチ切れた珍エピソード「なんだこれは。学生の分際で」

  4. 9

    (3)アニマル長嶋のホームスチール事件が広岡達朗「バッドぶん投げ&職務放棄」を引き起こした

  5. 10

    米スーパータワマンの構造的欠陥で新たな訴訟…開発グループ株20%を持つ三井物産が受ける余波