「僕はこうして生きてきた」蛭子能収著

公開日: 更新日:

「人生で必要なものは自由とお金」がエビス流哲学

 テレビのバラエティー番組に出ているときのへらへらした顔つきの奥に、何かある。本業は漫画家。筋金入りのギャンブラーでもあるエビスさんが、これまでの人生と、生き方のエッセンスを語っている。

 昭和22年、熊本県牛深市(現・天草市)生まれ。父は漁師で、狭い長屋に家族5人が暮らしていた。いじめに遭った中学時代に漫画を描き始め、高校卒業後、看板屋に就職。20歳のとき、漫画雑誌「ガロ」に掲載されていたつげ義春の「ねじ式」を読み、強い衝撃を受ける。ちょっとヘンな作風はここから始まっているらしい。

 看板屋をやめて上京後、ちり紙交換、ダスキンのモップ交換などで収入を得ながら、漫画家デビュー。さらに、芝居のポスターを描いたのをきっかけに芸能界とつながりが生まれ、テレビから声がかかるようになった。

 エビスさんのもう一つの顔はギャンブラー。高校を卒業した日、真っ先に向かったのがパチンコ屋で、以来50年間、競艇、競馬、競輪、麻雀、ルーレットと、あらゆるギャンブルをやってきた。この本でも「ギャンブルから教わった大事なこと」を伝授している。ギャンブルは遊びではなく、真剣勝負。持ち金の10分の1を勝てればよしとする。ギャンブラーは孤独な一匹狼……。テレビで見るゆるい構えとは打って変わって、真のギャンブラーの殺気めいた気配が立ち上る。

「人生で大切なものは自由とお金」「死なないように生きていれば人生なんとかなる」。エビス流人生哲学は、人に合わせず、自分に正直。どこか突き抜けた強さがある。「ガロ」に掲載されたデビュー作「パチンコ」も収録。あの時代の不条理感がよみがえる。(コスモの本 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁