ノンフィクションが面白い
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「服 服 服、音楽 音楽 音楽、ボーイズ ボーイズ ボーイズ」ヴィヴ・アルバーティン著 川田倫代訳
1976年、22歳のヴィヴは、祖母が残してくれた200ポンドでエレクトリックギターを買った。音楽にハマっていたが、レッスンを受けたこともないし、ギターに触ったこともない。楽器店の店員はヴィヴをバカに…
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「『ナパーム弾の少女』五〇年の物語」藤えりか著
1972年6月8日、ベトナム南部の農村で、ナパーム弾が炸裂した。その直後の決定的瞬間をとらえた一枚のモノクロ写真が、ベトナム戦争の真実を世界に知らしめることになった。 画面中央、裸で叫びなが…
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「紛争地のポートレート」白川優子著
地球の上では、戦争や災害による人道危機が絶えない。その現実を一番よく知っているのは、「国境なき医師団(MSF)」で活動している人たちではないだろうか。 著者もその一人だ。2010年から、手術…
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「朝日新聞政治部」鮫島浩著
「SAMEJIMA TIMES」というウェブメディアがある。元朝日新聞記者・鮫島浩が50歳で会社を辞め、たった1人で立ち上げた小さなメディアだ。 39歳で政治部デスク、その後、調査報道に専従す…
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「命のクルーズ」高梨ゆき子著
大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の優雅な船旅は、最終盤で暗転した。2020年2月2日、香港で船を下りた乗客が新型コロナウイルスに感染していたことが判明。乗客乗員は、未知のウイルスが蔓延する閉…
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「ギリヤーク尼ヶ崎という生き方」後藤豪著
1968年秋。東京・銀座の数寄屋橋公園で、1人の創作舞踊家が街頭デビューした。チョークで地面に輪を描き、真っ赤なピエロの衣装に着替えて、顔にドーランを塗る。テープレコーダーのボタンを押し、踊り始める…
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「搾取都市、ソウル」イ・ヘミ著 伊東順子訳
韓国の首都ソウルには、貧困層が暮らす最底辺住宅「チョッパン」が数多く存在する。老朽化した建物の一室をベニヤ板などでさらに細かく仕切った劣悪な賃貸住宅で、広さは大人1人がなんとか体を伸ばせる程度。トイ…
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「さよなら、野口健」小林元喜著
野口健は25歳のときエベレスト登頂を果たし、7大陸最高峰世界最年少登頂の記録を打ち立てた。 その後、エベレストや富士山への清掃登山を続け、環境活動に取り組むカリスマ登山家として知られるように…
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「ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえりお母さん」信友直子著
「お母さん、その話、もう昨日聞いたわ」 娘がそうツッコミを入れると、電話の向こうで息をのむ気配。その一瞬の沈黙が、娘を恐怖に陥れた。離れて暮らす母の認知症が始まっていた。 両親の老老介…
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「評伝 宮田輝」古谷敏郎著
日本の放送史上でひときわ輝くスターアナウンサー、宮田輝。生放送の時代に「のど自慢」「三つの歌」「ふるさとの歌まつり」などの名司会で全国津々浦々の会場を沸かせた。舞台の上で緊張のあまり固まる素人出演者…
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「AI監獄ウイグル」ジェフリー・ケイン著 濱野大道訳
中国西部、かつてシルクロードの要衝だった新疆ウイグル自治区が、SFを超えるディストピアと化してしまった。中国の少数民族は、無数の監視カメラとAIによる「デジタル監獄」で生きることを強いられている。 …
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「女優M子」吉川良著
2020年3月21日。宮城まり子永眠、93歳。それを知った吉川良は、静岡県掛川市の「ねむの木村」の方角にウイスキーをついだグラスを向けた。自分は83歳。人生、そろそろゲームセットか。心に残る人たちの…
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「世界を動かす共感力 ニュージーランドアーダーン首相」マデリン・チャップマン著 西田佳子訳
37歳の女性が首相になり、ほどなく出産。しっかり産休をとる。パートナーとは事実婚。国連総会に乳児を同行し、演説中はパートナーがおしめを取り換える。 こんなこと、日本では想像もできない。でも、…
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「そしてフジノオーは『世界』を飛んだ」辻谷秋人著
1966年、世界で最も過酷な障害レースといわれるイギリスのグランドナショナルに、日本馬として初めて参戦した馬がいた。日本最高峰の障害レース、中山大障害を4連覇した後のヨーロッパ遠征だった。一頭のサラ…
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「ソ連を崩壊させた男、エリツィン」下斗米伸夫著
1991年12月26日、社会主義の超大国ソ連が消滅し、ボリス・エリツィンを大統領とするロシア連邦が誕生した。あのとき、何が起きていたのか。ソ連・ロシア政治の研究者が、同時代人の回想録などの新たな史料…
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「『かもじや』のよしこちゃん」西舘好子著
東京の下町、浅草橋で生まれ育ったよしこちゃんは「かもじや」の娘。かもじとは、日本髪を結うときに、形よく整えるための補足品で、本物の髪の毛で作る。かもじ職人の父はおしゃれな江戸っ子で、イキのいい江戸弁…
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「ジョン・レノン最後の3日間」ジェイムズ・パタースン著 加藤智子訳
1980年12月6日。ハワイで警備員をしていたマーク・チャップマンは、ニューヨークのラガーディア空港に降り立った。銃の入ったスーツケースを持ってタクシーに乗り込み、マンハッタンに向かった。ジョン・レ…
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「聖子 新宿の文壇BAR『風紋』の女主人」森まゆみ著
新宿3丁目、花園神社の近くに、「風紋」というバーがあった。1961年に開店し、2018年に閉じるまでの約60年間、夜な夜な人が集った。檀一雄、井伏鱒二、色川武大、埴谷雄高、中上健次、浦山桐郎、大島渚…
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「北里柴三郎 感染症と闘いつづけた男」上山明博著
1894(明治27)年、清国(現在の中国)南東部で原因不明の疫病が大流行。対岸の香港に飛び火した。症状はかつてパンデミックを起こした黒死病に酷似していた。香港領事館の要請を受けた明治政府は、黒死病調…
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「慟哭の日本戦後史 ある報道写真家の六十年」樋口健二著
石油コンビナートから吐き出される煙で汚れた四日市の空。ぜんそくに苦しむ人々。被曝の危険にさらされながら原発内で働く労働者たち。開発の名の下に行われた凄まじい自然破壊。樋口健二の写真は、高度経済成長の…