佐高信「この国の会社」
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“夢見る人”山田光成は「ラムネ屋」と侮蔑されていた月賦販売を切り開いた
『日本経済新聞』の人気シリーズ「私の履歴書」に日本信販の会長だった山田光成が登場したのは1986年である。 山田のことは城山三郎が『風運に乗る』(角川文庫)と題して小説化し、私は『夕刊フジ』に…
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トヨタ化するホンダ…創業者・本田宗一郎の理念はどこへ
「お前たち、ホンダが何をやっているのか知ってるか?」 ホンダF1総監督をやることになる桜井淑敏が入社してまもなくの社員研修に突然現れた本田宗一郎はそう声をかけ、みんなが答えられずにいると、 …
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阪神タイガースを実質的に”阪急タイガース”にさせてしまった村上ファンド
アンチ・ジャイアンツである。先日、巨人が阪神に3連敗した時は、嬉しくて何度もスポーツニュースを見た。とてつもなく弱い今年の阪神に、しかし、ファンは変わらず熱い声援を送っている。 この阪神の親…
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投信を扱わない宣言をした北洋銀行・武井正直の言い分
4月16日付の『日刊ゲンダイ』に北海道経済同友会の代表幹事となった丸谷智保の記事が取り上げられている。旧北海道拓殖銀行出身でセコマ(旧セイコーマート)会長の丸谷が新任で、北洋銀行頭取の安田光春が留任…
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「企業は公器なり」を実践した東洋水産創業者・森和夫という”野人”
インスタントラーメンでは首位の日清食品よりも、「マルちゃん」の東洋水産が気にかかる。それは創業者の森和夫が田夫野人の魅力的な人だったからだ。 特に経営者からは敬遠されることの多かった私を、森…
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大手ゼネコンで唯一の非同族会社である大成建設に近い政治家は誰か
もう知っている人も少なくなったのかもしれないが、ある建設会社で創業家の御曹司がホステスと問題を起こし、彼女に会社の前に何日か立たれたことがあった。熊谷組とか大林組とか、鹿島を含めて建設会社には組と名…
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今のサントリーに佐治敬三の「コハク色の文化の匂い」はあるか
大下英治の問題作『小説電通』(徳間文庫)に、電通の”威力”を示すものとして、次のようなエピソードが挿入されている。 ウイスキー業界大手の「カントリー」に黒田という宣伝係長がいて、悪どく私腹を…
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安倍晋三のロシア案件「アーク2」に出資する三井物産の泥沼
3月23日付の『日刊ゲンダイ』に金子勝が「『サハリン』より筋悪な安倍案件『アーク2』から即撤退せよ」と書いている。ロシアのガス大手を中心とするLNGのプロジェクトのアーク2に出資する日本勢の権益は1…
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大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」
マッキンゼーなどに頼む経営者は経営者失格なのではないかと私は思う。大前研一がトップだったころのマッキンゼーで喜劇的なことが起こったからだ。本質的には喜劇ではなく悲劇である。 ワンマンの磯田一…
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SMBC日興証券による相場操縦で思い出した野村証券の損失補てん事件
SMBC日興証券の幹部が相場操縦の容疑で逮捕されたが、首位の野村は大丈夫なのか? 1991年にアル・アレツハウザーの『ザ・ハウス・オブ・ノムラ』の翻訳が新潮社から出た。当時は相場が低迷してい…
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早河洋氏がテレビ朝日で会長と社長を兼任する珍妙さ
そもそも会社に会長は必要なのか。社長を退いて会長になるのが慣例化しているが、それは責任の所在をあいまいにする二頭政治を生むだけだろう。だから私は、会長兼社長という珍妙なものになっている経営者を認めな…
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社員教育に影響を与えてきた「修養団」と宇部興産の中安閑一
この国では会社のカラーというのは簡単には変わらない。たいてい、後継社長は前社長から指名され、そのカラーを変えることは容易ではないからである。 東京は代々木の日本共産党本部の、明治通りをはさん…
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大川原化工機の冤罪事件を招いた”中国排除”経済安保の偏狭さ
偏狭な政治によって優秀な中小企業が破綻の淵に追い込まれた大川原化工機の事件を語る前に、やはり現在のような中国排除(それに経済安保の名をかぶせる)に抵抗した倉敷絹織(現クラレ)の社長、大原総一郎につい…
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小糸製作所株の買い占めでトヨタにケンカを売った男の言い分
この国にはKEIRETSUと横文字にもなっている系列会社の問題がある。清水一行はそのものズバリの『系列』(角川文庫)で、日産自動車と市光工業らしい関係をモデルにこれを描いている。 「東京自動車…
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原子力の平和利用に惑わされなかった「保険人」品川正治
この国の大企業の経営者で私と話の合う人はほとんどいない。しかし、日本火災(現損保ジャパン)の社長、会長を歴任した品川正治はその稀なる1人だった。 品川が経済同友会の副代表幹事兼専務理事だった…
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大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論
大阪府と連携して、いよいよ新聞であることをやめた読売新聞が同じく権力べったりの産経新聞を買収するのではないかという噂が流れているらしい。読売に身売りするわけだが、すでに政権に身を売っているのだから、…
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米国で生き抜いた「ベニハナ」 ロッキー青木はなぜ冒険するのか
今回は、「この国の会社」ではなく、「この国の人間」がアメリカにつくった店のことを書く。「ベニハナ・オブ・トーキョー」である。この会社はアメリカだけでなく、イギリスやカナダにも進出した。創業したのはロ…
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まさに「老害」…“社長キラー”と呼ばれた旭化成の宮崎輝
前回は反バブルの正の遺伝子は受け継がれているかと問うたが、今回は負のそれが断たれているかと尋ねたい。 この会社で長く社長の座を占め続けた宮崎輝は“社長キラー”と言われた。会長になってもその座…
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財テクに走らなかった硬骨漢 住友電工の川上哲郎に関経連はイヤガラセをした
「電線首位」のこの会社では会長だった川上哲郎を思い出す。川上は城山三郎と一橋大同期で骨のある経営者だった。 「財テクをしない経営者は化石人間だ」と主張した長谷川慶太郎などに煽られて、多くの経営者…
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八丁味噌のGI登録問題の異常さ 地元で名前が取り沙汰されている自民党有力政治家A
逆さまなことが認められようとしている。 愛知県岡崎市の「八丁味噌」の元祖が、その名を名乗れなくなりそうなのである。 農林水産省が地域の特定農林水産物を保護するために始めた「地理的表示…