演劇えんま帳
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「人間合格」太宰治の半生から節操なき“戦後日本人”を描く
若き日の太宰治に焦点を当てた井上ひさし作の評伝劇。 津島修治(太宰治=青柳翔)は、帝大入学のため青森から上京、学生下宿で貧乏学生の佐藤浩蔵(塚原大助)、山田定一(伊達暁)と出会い、たちまち意…
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「対岸の絢爛」IR問題の闇に斬り込む火を吐くような論戦
新型コロナウイルス騒動で公演中止が相次ぐ演劇界だが、感染予防に細心の注意を払いながら公演を敢行する劇団も多い。劇作家&演出家の中津留章仁が率いるトラッシュマスターズもそのひとつ。社会派劇団と呼ばれる…
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「泣くロミオと怒るジュリエット」世相表すダークな純愛劇
日本映画批評家大賞を受賞した映画「焼肉ドラゴン」で監督を務めた劇作家&演出家、鄭義信の作・演出による猥雑でダークでポップな舞台。 シェークスピアの時代もそうだったようにオールメール(男優のみ…
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二兎社「私たちは何も知らない」時代に抗した女性群像劇
「ザ・空気」(2017年)で報道現場の萎縮・忖度・自己規制という日本社会を覆う“空気”の正体に迫り、第2弾「ザ・空気2 誰も書いてはならぬ」(18年)では記者クラブ制度の弊害を描くなど、マスコミのタブ…
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「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」歌姫の歌唱競演が圧巻
ブロードウェーで活躍する新進気鋭の作曲家、クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーと日本版脚本・演出の板垣恭一ら日本チームが合作した世界初演のロックミュージカル。 19世紀半ばのアメリカを…
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軍人と海の男の対立「最貧前線」は戦前化する日本への警鐘
宮崎駿が模型雑誌に発表した「宮崎駿の雑想ノート」のエピソードのひとつを舞台化したもの。わずか5ページの短編を井上桂が脚本化、一色隆司が演出した。 太平洋戦争末期、福島の漁船「吉祥丸」が特設監…
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「世襲戦隊カゾクマンⅢ」アベが嫌いな戦後民主主義を体現
小劇場から商業演劇、テレビドラマの脚本と引っ張りだこの田村孝裕の作・演出。2014年に初演し、17年に第2作。そして今回が最終章となるカゾクマン・シリーズ最新作。 代々、世襲制で家業の「ヒー…
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劇団昴「Other People's Money 他人の金」格闘技のような激しい演技の応酬
1991年に映画化(日本未公開)されたジュリー・スターナーの戯曲をこのところ活躍めざましい小笠原響が演出。舞台という四角いジャングルの中で役者たちが激しい演技の応酬をする格闘技のような舞台となった。…
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イキウメ「獣の柱」が誘う日常と隣り合わせの不思議な異界
SF、オカルト、ホラーの手法を駆使し日常と隣り合わせの異界に潜む不思議感を独自の視点で描く前川知大(作・演出)の作品。2013年に上演されたバージョンの改訂版。 舞台は2001年の日本。ある…
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劇団東演創立60周年記念「マクベス」役者の身体性で魅了
モスクワ・ユーゴザパト劇場との提携公演。演出のV・ベリャコーヴィッチ(翻案・美術・衣装も)が2016年に急逝したため、現・芸術監督のO・レウシンがベリャコーヴィッチの演出を基に日本人スタッフと共同で…
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濃密なサスペンスホラー「山犬」で際立ったAKB48の個性
脚本・演出が劇団鹿殺しの丸尾丸一郎(原案=入交星士、音楽=オレノグラフィティ)、出演がAKB48とダンス集団コンドルズ。まさに異種格闘技だ。 卒業して10年目の高校同窓会の前日に、「私たちが…
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窪田&柚希コンビの圧倒的存在感で魅了「唐版 風の又三郎」
1974年に唐十郎作・演出・出演により状況劇場が初演した作品。今回の演出は唐十郎の愛弟子である金守珍(劇団新宿梁山泊)。主演はテレビ、映画で活躍中の人気俳優・窪田正孝と元宝塚トップスターの柚希礼音。…
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文化庁・日本劇団協議会主催「花の秘密」軽妙に描く男と女
韓国を挑発し続ける安倍政権のおかげで日韓の政治はぎくしゃくしているが文化芸術の交流は盛ん。演劇でも着実に成果を上げている。 今公演は、文化庁による日本の演劇人の海外研修の成果公演であり、韓国…
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【追悼】高取英さん 過激で心優しき異端の劇詩人
人気劇団「月蝕歌劇団」の代表である劇作家・演出家の高取英さんが26日、虚血性心疾患のため世田谷区の自宅で亡くなった。享年66。 1982年に演劇舎螳螂が初演した「聖ミカエラ学園漂流記」は高…
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エロスとタナトス…三島文学に夢幻能で迫る「豊饒の海」
大胆極まりない企画だ。原作は三島由紀夫の遺作「豊饒の海」。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の4部作からなる大河小説だ。それを2時間45分の舞台にまとめる試みなのだから、無謀ともいえる。しかし…
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KAAT「華氏451度」 無機質な現代の日本社会へ警鐘を鳴らす
原作はSF小説の巨匠、レイ・ブラッドベリが1953年に発表した同名小説。本の所持や読書が禁じられた近未来社会を描いたもので、タイトルは紙が燃え始める温度(華氏451度=セ氏約233度)を意味している…
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「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」 詩人の魂を昇華
1986年に松金よね子、田岡美也子、岡本麗の3女優が結成した演劇ユニットの解散公演。2015年に初演された作品であり脚本の長田育恵が第19回鶴屋南北戯曲賞を受賞している。 サブタイトル通り、…
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On7「その頬、熱線に焼かれ」 原爆乙女の矛盾と葛藤を活写
劇団チョコレートケーキの古川健が2015年に新劇女優7人のユニットであるOn7(オンナナ)第2回公演のために書き下ろした作品で、演出は日澤雄介。 原爆投下から10年の1955年。広島で被爆し…
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松坂桃李が非情な殺人マシンの複雑な内面を浮き彫りにした
人気俳優・松坂桃李がIRA(アイルランド共和国軍)の“殺人マシン”ヴィクター・マクガワンを演じる3部作(トリロジー)。作者はアイルランドの作家、シェーマス・スキャンロン。演出は小川絵梨子。 …
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青年座「安楽病棟」 超高齢化社会の“生と死”の問題を凝縮
原作は精神科医で作家の帚木蓬生、脚本は杉村春子賞受賞のシライケイタ、演出は気鋭の磯村純。 舞台は東京郊外の認知症病棟。お地蔵さんの帽子と前垂れをひたすら縫い続ける女性、夫の差し入れするサーモ…