週末オススメ本ミシュラン
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「吉祥寺ドリーミン てくてく散歩・おずおずコロナ」山田詠美著/小学館
小説家・山田詠美氏によるエッセーだが、読んで分かるのは同氏がストレスの少ない人生を送っているということである。とにかくムカつくことがあったら原稿用紙(手書き!)に罵詈雑言をぶつけ、違和感を覚えること…
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「危機の神学『無関心というパンデミック』を超えて」若松英輔、山本芳久著/文春新書/2021年
カトリック神学は、物事の構造を大づかみにして、処方箋を提示することが得意だ。対してプロテスタント神学は鋭い切り口で問題提起するが、解決策はなかなか提示できない。本書はカトリック神学の立場からコロナ禍…
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「職務質問」古野まほろ著/新潮社
私が本書に興味を持ったのは、私自身が数年前に職務質問を受けたことがあったからだ。私の周囲には、職務質問を受けた経験がある人がいない。なぜ私だけが対象になったのか、その理由を知りたかったのだ。 …
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「人間と宗教」寺島実郎著/岩波書店
実に刺激的な本である。著者と私は対談の共著も出しているが、関心のあり方が微妙に違う。例えば、同世代人として「三島由紀夫と司馬遼太郎」を対比するといった問題意識は私にはない。それだけに虚を突かれた思い…
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「東大ナゾトレ SEASONⅡ 第9巻」松丸亮吾監修/扶桑社
フジテレビ系番組「今夜はナゾトレ」の人気コーナー「東大ナゾトレ」から生まれた本だ。問題を制作したのは、東京大学謎解き制作集団AnotherVision。いわゆる「脳トレ」的な頭の体操が多数収録されて…
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「ナワリヌイ プーチンがもっとも恐れる男の真実」ヤン・マッティ・ドルバウム/モルヴァン・ラルーエ/ベン・ノーブル著 熊谷千寿訳 NHK出版/2021年
ロシアの知識人(インテリゲンチア)は右であれ、左であれ、極端な思考をし、行動する傾向がある。現代におけるその典型が反政権活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏(45歳、現在収監中)だ。 欧米や日本…
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「ゴルフ文化産業論」西村國彦著/河出書房新社
小泉・竹中改革の不良債権処理の一環で、日本中のゴルフ場がハゲタカ外資の餌食になった。本書は、会員権を持つゴルファーの権利をハゲタカ外資から守る戦いを続けてきた弁護士の著書だ。 私はこれまで、…
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『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』金平茂紀著/講談社
筑紫ファンにとっては、たまらない本である。往時のアルバムを見るように、筑紫のさまざまな表情が映し出されている。 ただ、著者が身近にいたが故に、筑紫との距離がうまく取れていない感じもある。端的…
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「超ファシリテーション力」平石直之著/アスコム
「猛獣使い」とも評される、テレビ朝日・平石直之アナウンサーが書いた「いかにして場を円滑に回していくか」の極意を描く本である。同氏は、各界の論客や話題の人々、炎上の渦中にいる人などが登場する報道番組「A…
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「大下流国家『オワコン日本』の現在地」三浦展著/光文社新書/2021年
資本主義社会における国力を測る上で最も重要なのは経済力だ。少子化が日本経済停滞の原因であるという見方は正しくない。韓国は日本以上の少子化社会であるが、経済は着実に成長している。既に購買力平価に換算し…
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「出る杭の世直し白書」鳩山由紀夫、孫崎享、前川喜平、植草一秀著/ビジネス社
本書は、鳩山友紀夫、孫崎享、前川喜平、植草一秀の対談をまとめたものだ。私は、4人とも直接、話をしたことがあるのだが、とても優秀で切れ味鋭い論客だ。ところが、彼らはあまりテレビ番組に出てこない。その理…
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「2050年のジャーナリスト」下山進著/毎日新聞出版
どこよりも早く報道することを競う日本の新聞の前うち主義を批判するこの本を読みながら、城山三郎の次の発言を思い出した。 「新聞は原則として夕方まで読まないようにしているんです。読むと腹が立つこと…
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「同調圧力の正体」太田肇著/PHP新書
新型コロナ騒動により、日本人の「同調圧力」の強さを思い知った人も多いだろう。各国はロックダウンやマスク着用を義務化。外に出たら罰金やムチ打ち刑に。豪州では、マスク非着用の人間には大勢の警官が寄ってき…
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「ひとの住処 1964―2020」隈研吾著/新潮新書/2020年
去年、上梓された本であるが、東京オリンピック・パラリンピック2020を総括する上で不可欠の作品だ。本書は、新国立競技場を設計した隈研吾氏による自伝的文明論だ。 隈氏は1964年の東京オリンピ…
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「『日本型格差社会』からの脱却」岩田規久男著/光文社新書
著者は、第2次安倍政権で日銀の副総裁を務めた。日銀の量的金融緩和は、総裁の名前を採って「黒田バズーカ」と呼ばれるが、その理論的バックグラウンドをつくったのは間違いなく著者だ。著者は、かなり昔から孤軍…
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「魂を撮ろう」石井妙子著/文藝春秋
水俣病の闇は深い。それに、どこから、どう光を当てるか。著者はMINAMATAの写真を撮ったユージン・スミスの若き妻、アイリーンを“発見”した。正式の名前はアイリーン・美緒子・スプレイグ。伝説のフォト…
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「無理ゲー社会」橘玲著/小学館新書
「言ってはいけない―残酷すぎる真実―」(新潮新書)や「上級国民/下級国民」(小学館新書)など、データを駆使して救いようのない現実をこれでもか、と見せつける橘氏の新刊である。 今回も「無理ゲー社…
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「権力は腐敗する」前川喜平著/毎日新聞出版
文部科学省で官僚のトップである事務次官をつとめた前川喜平氏による安倍晋三前政権と菅義偉現政権に対する厳しい批判本だ。 <かつて、腐敗した権力は革命や戦争といった暴力でしか打倒できなかった。代議…
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「ドムドムの逆襲」藤﨑忍著/ダイヤモンド社
今年最速の短時間で読了した。中身が薄いわけではない。構成がしっかりしていて、文章に無駄がなく、論理的だからだ。 著者は、短大卒で39歳まで専業主婦をしていた。しかし家計を支える必要が生まれて…
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「この国のかたちを見つめ直す」加藤陽子著/毎日新聞出版
東大教授の加藤に、じょっぱり(津軽弁で強情っ張り)だった歌手の淡谷のり子を連想すると言ったら、加藤は苦笑するだろうか。 こんな逸話がある。テイチクのディレクターから、「星の流れに」をどうかと…