週末オススメ本ミシュラン
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「日本経済の黒い霧」植草一秀著/ビジネス社
本書は、ウクライナ戦争を含む最新の世界情勢を踏まえた経済評論だ。ただし、よくある経済評論とは一線を画している。 例えば、ウクライナ戦争は、米国が仕掛けた罠にロシアがはまった可能性があるとの話…
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「サービサーの朝」前野理智著/伏流社
新聞屋、略してブンヤが気取ってジャーナリストなどと名乗ってから、迫力ある記事が見かけられなくなったように、この国ではカタカナは大抵、何かを隠す時に使われる。サービサーもそうである。借金取り立て、つま…
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「コロナ論5」小林よしのり著/扶桑社
新型コロナ騒動が開始してからついに3年目に入った。訪れる場所すべてで「カンセンタイサクノテッテイヲー」のアナウンスがされ、人々は商業施設入り口での蠅のごとくアルコール消毒でお手々スリスリをし、マスク…
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「帝国の遺産 何が世界秩序をつくるのか」サミール・プリ著 新田享子訳/東京堂出版
英国出身の国際政治学者サミール・プリ氏は、<私たちは、個人としても国としても、帝国主義時代から多様な過去を引きずっている。背負っている過去が違えば、世界の見方がこれほど異なるのだと、この本をきっかけ…
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「シナプス」大木亜希子著/講談社
私は普段小説をあまり読まないのだが、本書はすぐに読んだ。著者のキャリア形成に強い興味を持っていたからだ。 著者は、元SDN48のメンバーで、AKBグループの一員として紅白にも出場した。ただA…
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「原発広告」本間龍著/亜紀書房
プーチンが原発をも攻撃している現在、改めて原発推進の旗を振った人たちを挙げ、その責任を問いたい。 私は2011年6月に「原発文化人50人斬り」(毎日新聞社、のちに光文社知恵の森文庫)を出した…
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「古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで」柿沼陽平著/中公新書
「三国志」や「項羽と劉邦」の時代について、多くの人は小説や漫画、ゲームで知っているだろうが、そこで描かれるものは基本的には「戦争」や「戦略」にまつわるものであり、人々の生活はよく分からない。農民が義兵…
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「インテリジェンス用語辞典」川上高司監修/並木書房
陸上自衛隊の情報部隊勤務経験者(樋口敬祐氏、上田篤盛氏)と研究者(志田淳二郎・公立名桜大学准教授)が執筆した実務と学術の双方に役立つ、優れたインテリジェンス(情報、諜報)用語事典だ。 インテ…
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「AI監獄ウイグル」ジェフリー・ケイン著 濱野大道訳/新潮社
新疆ウイグル自治区で、人権侵害が行われていること自体は知っていたが、ここまでひどいとは思わなかった。少数民族に対する抑圧は、専制国家ではよくある事態だが、ウイグル人に対する弾圧は、北朝鮮の人権侵害を…
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「おっさんの掟」谷口真由美著/小学館新書
石原慎太郎が亡くなって、それはホメ殺しではないかと思えるほどの賛辞が並べられている。しかし、私は5年前に「石原慎太郎への弔辞」(ベストブック)を出した。そこに収録した座談会で辛淑玉が「彼は男はわかる…
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「歴史なき時代に 私たちが失ったもの 取り戻すもの」與那覇潤著/朝日新聞出版
冒頭から著者の「残念です!」といった感覚が伝わってくる本である。新書にしては分厚い449ページのこの本は、思想家としての著者が今の世の中に対して本気で訴えたいことが詰まっている。 2020年…
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「ヒトの壁」養老孟司著/新潮新書
医学者で解剖学者の養老孟司氏(東京大学名誉教授)によるユニークな評論だ。タイトルは「ヒトの壁」であるが、内容は日本人論だ。 養老氏は精神分析の方法を用いて日本人の特徴を分析する。 <こ…
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「農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ」川内イオ著/文春新書
本書は農業や農業関連ビジネスで成功を収めた10人の起業家たちへのインタビューをとりまとめたドキュメントだ。ただ10人には共通点があって、いずれも他分野からの転身組だということだ。 私自身も4…
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「賃金破壊」竹信三恵子著/旬報社
中国文学者で魯迅の訳者でもある竹内好の故郷、長野県佐久市で竹内についての講演をして以来、竹内の本を読み返している。 1963年3月31日の日記に竹内はこう書いていて、改めてこの本のことを思っ…
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「吉祥寺ドリーミン てくてく散歩・おずおずコロナ」山田詠美著/小学館
小説家・山田詠美氏によるエッセーだが、読んで分かるのは同氏がストレスの少ない人生を送っているということである。とにかくムカつくことがあったら原稿用紙(手書き!)に罵詈雑言をぶつけ、違和感を覚えること…
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「危機の神学『無関心というパンデミック』を超えて」若松英輔、山本芳久著/文春新書/2021年
カトリック神学は、物事の構造を大づかみにして、処方箋を提示することが得意だ。対してプロテスタント神学は鋭い切り口で問題提起するが、解決策はなかなか提示できない。本書はカトリック神学の立場からコロナ禍…
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「職務質問」古野まほろ著/新潮社
私が本書に興味を持ったのは、私自身が数年前に職務質問を受けたことがあったからだ。私の周囲には、職務質問を受けた経験がある人がいない。なぜ私だけが対象になったのか、その理由を知りたかったのだ。 …
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「人間と宗教」寺島実郎著/岩波書店
実に刺激的な本である。著者と私は対談の共著も出しているが、関心のあり方が微妙に違う。例えば、同世代人として「三島由紀夫と司馬遼太郎」を対比するといった問題意識は私にはない。それだけに虚を突かれた思い…
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「東大ナゾトレ SEASONⅡ 第9巻」松丸亮吾監修/扶桑社
フジテレビ系番組「今夜はナゾトレ」の人気コーナー「東大ナゾトレ」から生まれた本だ。問題を制作したのは、東京大学謎解き制作集団AnotherVision。いわゆる「脳トレ」的な頭の体操が多数収録されて…
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「ナワリヌイ プーチンがもっとも恐れる男の真実」ヤン・マッティ・ドルバウム/モルヴァン・ラルーエ/ベン・ノーブル著 熊谷千寿訳 NHK出版/2021年
ロシアの知識人(インテリゲンチア)は右であれ、左であれ、極端な思考をし、行動する傾向がある。現代におけるその典型が反政権活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏(45歳、現在収監中)だ。 欧米や日本…