評論家・須田鷹雄が語る ディープインパクト「3つの衝撃」

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ディープインパクト(平成14年生まれ)

 4センチ差の名勝負――競馬ファンにそう語り継がれているのが、1999(平成11)年の有馬記念だろう。当時の5大競走と天皇賞は、外国産馬の出走が制限。マル外の雄グラスワンダーにとって、暮れのグランプリは是が非でも欲しいタイトルだった。接戦の末の連覇で意地を見せたが、大観衆の声援を受けて②着馬が“ウイニングラン”。その前の年、武豊にダービーの栄冠をもたらしたスペシャルウィークで、今年4月27日、天国に旅立った。

 平成の競馬史に燦然と輝く金字塔も、名手が主戦を務めたあの馬だ。競馬評論家の須田鷹雄氏に聞いた。

「昭和が終わる年に笠松からJRAに移籍したのがオグリキャップ。その年の有馬記念を制して平成幕開けの競馬を盛り上げましたが、平成全体となるとディープインパクトです。国内で負けたのは、3冠馬として臨んだ2005(平成17)年の有馬記念②着のみ。追い込み馬は時々取りこぼすものですが、あの異次元の末脚は衝撃を覚えました」

 アルザオの肌にサンデーサイレンスの配合。02(平成14)年3月25日に生まれると、同年のセレクトセールで金子真人氏が7000万円で落札する。

 これが最初の衝撃だった。

■日本の夢を背負って凱旋門賞へ

「ディープは、セレクトセールの質を高めた点でも貢献しています。もちろん、98(平成10)年の初年度はマンハッタンカフェ、3年目はゼンノロブロイなど良質な馬をたくさん上場。それまでの庭先取引を一変させたセリですが、5年目に上場されたディープの登場で、『本当に強い馬が出る』ということが誰の目にも明らかになりました。金子さんが競合を受けずに一声で落札したことも含めて衝撃ですね」

 競走馬としては小柄な440キロほど。日本の夢を背負った小兵がフランスの地を踏んだのは06(平成18)年だ。名手も、世界最高峰の凱旋門賞では気がせいたのか、NHKの解説で岡部幸雄元騎手が「まだまだ」と連呼したように早め先頭のレースぶりで後続に差されて③着入線(その後失格)。悲願達成はならなかったが、世界にその名を轟かせたのは間違いない。

「その父サンデーサイレンスは、飛節(写真上)の形が悪く、一部にあった『本当に走るのか』という懐疑的な見方をはね返して大成功。シンザンがミホシンザン、シンボリルドルフがトウカイテイオーを輩出したりしていますが、『内国産種牡馬の産駒で走る馬は一握り』という通説をSSとその後継馬たちが覆し、ディープにつながります。ディープは、内国産種牡馬の価値を高めたのがスゴイ。世界的なインパクトです」

 ディープ産駒の牡馬サクソンウォリアーは今春、デビューから4連勝で英クラシックの一角2000ギニーを勝つ。これが3つ目の衝撃。④着に敗れたダービーでも1番人気に推された。海外でも、ディープ産駒は人気だが……。

「国内はSSのクロスの問題が大きく、非SSの血が求められています。それがキングカメハメハの後継種牡馬で、ロードカナロアやルーラーシップ。輸入種牡馬では、ハービンジャーも見逃せません。ディープ産駒の大成功で、SS系の血が牡牝ともに濃いだけに、次の時代の種牡馬は、群雄割拠でしょう」

 来年度の種付け料が1500万円にハネ上がったカナロアがリードか。

「カナロアは短距離系の種牡馬です。アーモンドアイが、2400メートルをこなすのは、母系に長距離適性があるからで、カナロア産駒がすべてこなすとは限りません。そこが、クラシックディスタンスOKのディープとの大きな違いです」

 次の時代も、ディープインパクト級の馬が現れるのだろうか。 (おわり)

すだ・たかお 1970年、東京都生まれ。東大経済学部卒。JR東日本を経て96年に独立。著書「POGの達人」はファンのバイブルに。

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