ワセダクロニクル渡辺周編集長<4>当局提供ネタよりも発掘
2000年4月、朝日新聞に補欠合格した渡辺は新聞記者になった。初めての報道現場である。
初任地は島根県だった。1年目は当然、県庁、警察回り。その他に、イベントや季節ものを書かされた。
「真夏日」の取材を命じられた渡辺が書いたのは、イギリスから来たサーカス団のトラたちが暑さでぐったりしている記事である。整理部の先輩が悪ノリして「暑い真夏日 帰りタイガー」と見出しをつけたが、実際の紙面では「サーカスのトラ ぐったり」になっていた。
ま、たわいのない季節ものなのだが、入社後半年研修の際、渡辺は自分の「自慢の一本」として、この記事を持って行った。同期たちは、警察取材の「抜きダネ」を持ち寄った。渡辺は「帰りタイガー」取材の苦労話を説明した。講師役の記者は「もうええわ」と遮った――。