いわくつきの店の経営権をすぐさま格安で買い取った商才
「快活林事件」当時、まだ大阪のラーメン店でバイトしていたRママは、「S」が格安で売りに出されるという情報を友人から聞き、大胆にも店の経営権を買い取ろうと思いついた。
「接客のノウハウは2年間のアルバイトで習得した。チャンスだ……」
そう考え、のちに夫となる日本人男性から600万円という大金を出資してもらったのである。かくしてママに収まったRはあえて店の名前を「S」のままにした。2階建ての店舗は狭くて壁一面が油まみれ。お世辞にもキレイとは言えなかった。それでも毎月10万円の激安家賃は、素人の経営者にとってどれほどありがたかったか。
「凶悪事件の犯人たちが出入りしたいわくつきの店だったけど、歌舞伎町界隈、特に新宿を拠点として商売をする中国人の間では大人気でした。客の大半は同胞の上海人ばかり。彼らを引きつけるため、ママは店で上海本場の家庭料理の味を再現しようとした。東京の高級中華料理店に派遣されてきたベテラン中国人コックを、月給80万円という破格の報酬で引き抜いたと聞いています」(ママと旧知の中国人クラブ経営者)