• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

ユダヤ人迫害をいち早く察知した“ピッピ”の生みの親

「リンドグレーンの戦争日記 1939─1945」アストリッド・リンドグレーン著、石井登志子訳 岩波書店 3400円+税

 赤毛のツインテールで、顔はそばかすだらけ、そして長いくつ下をはいている世界一つよい女の子“ピッピ”。ご存じ、スウェーデンの児童文学作家、アストリッド・リンドグレーンの「長くつ下のピッピ」である。この作品はおよそ70以上の言語に翻訳され、100カ国以上で出版されているという、世界的ベストセラーだ。

 この話は、1941年の冬、「あしながおじさん」を好きだった娘のカーリンが肺炎にかかって寝込んでいるとき、「長くつ下をはいている女の子のお話をつくって」とせがまれたのがきっかけだったという。

 本書は、第2次世界大戦の勃発となる1939年9月1日のドイツ軍のポーランド侵攻から戦争が終結した1945年の大晦日まで、リンドグレーンが記した日記の全文を収めたもの。日記には家族や食料のことなども書かれてはいるが、主となるのは戦争のこと。新聞雑誌にこまめに目を通し、ドイツやイギリス、ソ連の動きを書き付ける。そこには自分たちが理不尽にも巻き込まれてしまったこの戦争で、いま何が起きているのかを正確に知ろうという強い意志がある。

 しかもその情報の捉え方は極めて公正で正鵠(せいこく)を射ている。それは中立国というスウェーデンの立場もあるし、彼女が政府管轄の戦時手紙検閲局で勤務していたため普通よりは情報を得やすかったこともあるが、ユダヤ人に対する迫害をいち早く察知したり、国家と個人を峻別(しゅんべつ)して事の善悪を判断するという考え方は彼女自身が培ってきたものだろう。

 日記の初めでは作家になる前の30代初めの2児の母親だった彼女が、やがて「長くつ下のピッピ」を生む作家となる過程をそこに読むこともできる。なにより、あのピッピの天衣無縫な自由さこそが、長い戦争の中でリンドグレーンが渇望していたものだということが、ひしひしと伝わってくる。 <狸>

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中居正広“ジャニーズ残留”決定か…ウラに野望とカネと打算

  2. 2

    静香次女コウキ ファッション業界で囁かれる“本当の実力”

  3. 3

    キムタク低迷と次女デビューで…動き出した工藤静香の狙い

  4. 4

    無策の安倍首相を尻目に…本田圭佑「電撃訪朝」急浮上

  5. 5

    竹内涼真vs手越祐也 明暗分かれたサッカーW杯キャスター評

  6. 6

    フジの中居MC計画潰した 「徹子の部屋」は元の放送時間へ

  7. 7

    強豪私学が相次ぎ予選敗退…公立高校が全国で“逆襲”のワケ

  8. 8

    90年代はやりたい放題だった…とんねるずへのノスタルジー

  9. 9

    結婚を前提に交際中…高畑充希を両親に紹介した坂口健太郎

  10. 10

    最近目立つ暴力事件より高校野球で根深いのは“たばこ問題”

もっと見る